ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業は、微小皮膚採取技術「マイクロバイオプシー」を用いた研究により、敏感肌に肌状態や肌内部の遺伝子発現が異なる複数のタイプが存在することを見いだした。

敏感肌は、世界中で多くの人が抱える身近な肌悩みで、赤みやほてり、かゆみ、ヒリヒリ感といったさまざまな状態が現れるが、その現れ方は人によって大きく異なる。こうした違いがなぜ生じるのかは、これまで十分には分かっていなかった。今回、敏感肌の「個人差」に着目し、肌内部での遺伝子の働きと肌の状態とを網羅的に解析する研究に着手した。

肌内部での遺伝子の働きを明らかにするためには、肌内部の情報を得る必要がある。一方で、こうした情報を得るには肌への負担が課題となることもある。そこで同研究では、肌への負担が少ない微小皮膚採取技術「マイクロバイオプシー」を活用し、肌内部の遺伝子発現を網羅的に取得した。さらに、医師による診断やさまざまな機器による肌測定の結果を統合し、肌状態と遺伝子発現の膨大なデータの関係性を総合的に解析した(図1)。

マイクロバイオプシーは、注射針よりも細い直径250µm程度の針で、皮膚からごく少量の細胞を採取する手法(図2)。従来の皮膚採取法である「パンチバイオプシー」は、局所麻酔後に直径2~4mmの器具で皮膚を採取するため、負担が大きく、課題があった。これに対しマイクロバイオプシーは、傷が極めて小さく回復も早いため、敏感肌のような刺激の影響を受けやすい皮膚でも低負担に評価できる。さらに、特定部位や経時的な採取、またDNA、RNA、タンパク質などを多面的な分析が可能で、皮膚内部の状態や変化を詳しく把握できる。ポーラ化成工業では、マイクロバイオプシーで採取した微小皮膚のRNAから全遺伝子の網羅的な遺伝子発現量を測定する手法を確立し、研究を進めてきた。

敏感肌を自覚している女性と自覚していない女性計47人を対象に、頬の皮膚を採取し、遺伝子発現を網羅的に解析した。さらに、医師による診断や機器による肌測定の結果と合わせて評価することで、肌状態の違いを評価した。 その結果、敏感肌は、肌内部の遺伝子発現状態に多様性が見られ、遺伝子の発現パターンが大きく六つに分かれることが判明(図3)。それらの遺伝子は、免疫応答に関連する群、皮膚バリアの形成に関連する群などだった。さらに、それぞれの遺伝子群は、赤みや水分量など、異なる肌状態と関連があることも判明した。

敏感肌では、症状や肌状態の違いが人によってさまざまであることは、これまでも経験的に知られていた。今回の解析により、そうした違いが肌内部の遺伝子発現の違いとして明瞭に捉えられることが明らかになった。また、敏感肌をひとくくりにできない多様な状態として捉える新たな視点は、敏感肌の実態解明を進めるとともに、新たな研究アプローチにつながると期待される。

なお、同研究は、長年にわたり敏感肌や酒さ(赤ら顔)の臨床研究に携わってきた ALOOP CLINIC&LAB の山﨑研志医師と共同で実施し、5月開催の第83回米国研究皮膚科学会(Society for Investigative Dermatology〈SID〉 Annual Meeting)にて発表した。