花王ヘアビューティ研究所は、ヘアカラー後7日目頃から実感するパサつきやうねりなどのダメージに、毛髪内部で進行するタンパク質の構造変化が関係していることを、世界で初めて(※1)明らかにした。さらに、この現象は黒髪で顕著なことからメラニンが関与している可能性を見いだし、ヘアカラー後の髪のダメージを抑え、髪色を美しく保つ技術を新たに構築した。今回の研究成果は、5月28~31日に韓国・ソウルで開催した14th World Congress for Hair Researchにて発表した。

ヘアカラーはファッションや個性の表現として広く親しまれている。一方で、ヘアカラーによる髪のパサつきやうねりなどのダメージに悩む生活者も少なくない。こうしたダメージは主に施術中に生じると考えられてきたため、これまでの研究は施術時に生じる髪への影響解明が中心で、その後の時間経過に伴う髪の状態変化については十分に検討されてきこなかった。しかし生活者からは、「カラー直後よりも1週間程度経ってからダメージを感じる」という声も多く聞かれる。

そこで花王は、ヘアカラー後にも毛髪内部でダメージが進行しているのではないかと考え、ヘアカラー後7日間の毛髪内部の変化を調べた。

毛髪は主にケラチンというタンパク質で構成されており、その中にあるSS結合というつながりが、髪の強さや形を保つ役割を果たしている。SS結合が切断され、不規則に再結合すると、パサつきやうねりなどの実感が現れることが知られている。そこで花王は、ヘアカラー後に数日経ってから感じるダメージは、毛髪内部でSS結合の切断が進行することが一因ではないかと考え、SS結合の切断によって生じるSH基を指標としてヘアカラー後の毛髪内部の状態を調べた。

黒髪を用いて作成した長さ15~20cmの毛束(モデル毛束)を、一般的なヘアカラー剤(酸化染毛剤)で染毛し、ヘアカラー直後および7日後に、SH基と反応して光る試薬を用いて蛍光顕微鏡で観察した(※2)。その結果、ヘアカラー後7日目の毛髪内部で強い蛍光が見られ、SS結合の切断が進行していることを世界で初めて確認した(図1)。

一方、白髪のみで作成したモデル毛束ではヘアカラー後7日目にSS結合の切断は見られなかった。このことから、黒髪でみられたヘアカラー後のSS結合の切断にはメラニンが関与していることが示唆された。

一般的に、SS結合の切断にはラジカル(※3)が関与することが知られているが、ヘアカラー施術中にはメラニンに由来するラジカルが増加することも報告されている。そこで花王は、ヘアカラー後のSS結合の切断にラジカルが関与している可能性に着目し、検証を行った。

黒髪を用いて作成したモデル毛束を一般的なヘアカラー剤で染毛し、その直後に異なる成分を含むさまざまな水溶液に1時間浸漬してすすいだ。その後、3日間相当の反応が進行する条件(※4)で静置し、蛍光顕微鏡で観察した。その結果、ラジカル生成を抑制するとされているソルビトール水溶液およびトコフェロール水溶液に浸漬した毛束では、浸漬しない毛束に比べて蛍光が弱くなった。花王はこの知見をもとに、ヘアカラーに関連して生じるSS結合の切断を防ぎ、ヘアカラー後の髪のダメージを抑え、髪色を美しく保つ「ヘアリンクプロテクション技術」を構築した。

さらに、黒髪女性3人を対象に一般的なヘアカラー施術を行った後、ソルビトールとトコフェロールを配合したヘア製剤と、含まないヘア製剤を左右半分ずつに分けて使用し、7日後に評価を行った(※5)。その結果、ソルビトールとトコフェロールを配合したヘア製剤を使用した場合、時間の経過に伴うパサつきやうねりが抑えられ、髪がまとまりやすくなり、さらに望ましくない黄みも目立ちにくくなった。

 

※1:黒髪において、ヘアカラー後7日間のうちに毛髪内部のSS結合の切断に伴うSH基の生成が進行する現象について。生命科学・生物医学分野の代表的な文献データベースであるPubMedおよび世界最大級の文献データベースであるScopusを用い、学術論文を検索。「ヘアカラー後の7日間でSH基が生成される例」について該当なし(2026年5月29日時点、花王調べ)

※2:SH基を蛍光で可視化するためにABDF試薬を毛髪に応用し、内部状態を評価する独自手法を確立。結果は3本の毛髪の平均値で解析。

※3:反応性が高く、周囲の物質に変化を引き起こしやすい化学物質

※4:毛髪を加温し、ヘアカラー後のSS結合切断の反応を加速させた条件

※5:ヘアカラー直後に美容技術者が製剤を塗布、翌日(または翌々日)は本人が塗布。評価は、美容師・研究員による専門パネラー評価と、本人による主観評価を実施。