ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業は、力をかけると崩れ、力を抜くと戻る化粧膜の技術により、アイクリームにおいて従来は困難であった「塗布中の肌に溶け込むようななめらかなのび」と「塗布後のハリ感」の両立を実現した。
アイクリームには、ハリ感を与えながら、目もとをこすらずなめらかにのび広がることが求められる。しかし従来は、この両立が難しいという課題があった。ハリ感の高い硬いオイルや皮膜形成剤は強固な構造を持ち、塗布時にも変形しにくいためのびが悪く、一方でのびの良いオイルは構造を持たず流動的であり、やわらかいためハリ感に乏しくなるためだ(図4)。
ポーラ化成工業は、塗布中のなめらかなのびと塗布後のハリ感を両立するため、力に応じて構造が変化し、元に戻るオイルに着目した。このオイルは、トランプを立てかけた「カードハウス」のように板状の結晶が立体構造を作り、力が加わると一時的にくずれ、力を抜くと自然に組み直される性質だ(図1)。
この構造の特長を最大限に生かすため、オイルの組み合わせと製法を検討した。カードハウス構造を形成するオイルは、板状の結晶同士が引っかかるように組み合わさっている。結びつきは強すぎないため、力を加えると一時的に粘度が低下してやわらかくなり簡単にくずれるが、力を抜くと再び触れ合って元の構造に戻り粘度も回復する、最適な組成を見いだした。この挙動は、組み合わせるオイルによって変化する。
そこで各種オイルの組み合わせについて、力の有無による粘度変化を評価した(図5)。その結果、力をかけると大きく粘度が下がって戻りやすい一方で、もとの粘度が低いもの(組成①)や、静置時は高粘度で力による変化も小さいもの(組成②)など、異なる挙動が確認された。これは、オイルの種類によって構造の崩れやすさや戻りやすさが異なるためだ。これらを組み合わせることで、初期は高粘度でありながら、力を加えると粘度が低下し、力を抜くと再び上昇する組成(組成③)を見いだした。この組成により、従来のオイルでは難しかった塗布中のなめらかなのびと塗布後の高いハリ感の両立が示唆された(図2)。
さらに、テクニカルディベロップメントセンター(TDC)に導入した独自の高性能装置により、高速で分散処理して板状結晶を細かくすることで分散性を高め、粘度回復性(構造の戻りやすさ)への影響を検討したところ、構造がより緻密で強固となることを確認(図3)。
その結果、粘度回復性が高まり、より高いハリ感の実現につながった。従来ののびの良いオイルは粘度が低く、力の有無で変化しない。これは、特に構造を形成せずに流動的であるためだ。一方、構造復元オイルは、力の有無で粘度が変化することから、塗布中には溶け込むようにのび、塗布後には高いハリ感につながると期待できる(図6)
設計した構造復元オイルをTDCに導入した装置で分散させ、力をかけたときの粘度変化を評価したところ、力を加えた後の粘度が戻りやすいことが確認された(図7)。これは、結晶がより細かく分散し、カードハウス構造がより密に形成されたためと考えられる。カードハウス構造は、結晶同士の接点が増えることで構造が密になる。そのため、結晶を十分に分散・微細化することが、構造の働きを十分に引き出すうえで重要だ。
また、設計した構造復元オイルを配合した開発品の評価を実施した。その結果、製剤としても高い粘度回復性を示した(図8)。さらに、専門評価者の約7割が「溶け込むような感じ」、また約6割が「目もとを引き締めるようなハリ実感」が、従来品より高いと回答(図9)。これらの結果から、開発品は肌に溶け込むような感じとハリ感を両立することが確認された。



























