中国越境EC市場で、日本のヘルスケアブランドを取り込む動きが加速している。NOVARCAが開催したヘルスケアセミナーでは、アリババグループの天猫国際が、需要検証からブランド育成、本格展開までを一気通貫で支援する直送事業「探物」の戦略を提示した。

天猫国際では、中国の中間所得層が拡大局面にあり、2030年に向けて消費規模の拡大が続くとみる。中国消費者の購買意欲は主要先進国を上回る水準にあり、越境EC市場も政策支援を追い風に成長しているとの認識だ。越境EC総合試験区の拡大や輸入制度の整備も市場拡大を支える要因に位置付ける。

こうした環境下で存在感を増しているのがヘルスケア領域だ。NOVARCA側は、日本のヘルスケア市場について、商品数の多さや高度な細分化に独自性があるとみる。子ども向け、女性向け、夜用、即効型、穏やかな効き方など、症状や生活シーンごとに細かく商品が設計されている点が特徴だ。加えて、病気の治療だけでなく、目や肩、胃腸など慢性的な不快感に応える慢性軽症ニーズへの対応力も日本市場の強みと分析する。

高齢化先進国として形成してきた日本の商品設計思想は、今後同様の社会課題に直面する海外市場でも展開余地が大きいとの見立てだ。一方で、海外では「効く・効かない、という二元的な評価軸が中心となりやすく、日本商品特有のきめ細かな価値が十分に伝わりにくい側面もある」とNOVARCAは指摘する。ここに探物の役割がある。いきなり大規模展開に踏み切るのではなく、中国消費者の反応を見ながら、商品価値が現地消費者にどう受容されるかを検証できる点が同モデルの強みとなる。

探物は「販売機能ではなくブランド育成モデル」

旭宏 天猫国際 天猫探物 総責任者

天猫国際の事業構は大きく3つのモデルで構成する。ブランドが主体となる「公式旗艦店」、天猫側が仕入れ販売を行う「自営」、そして新規ブランドや小規模ブランドを受け入れる「探物」だ。探物で一定の販売実績や顧客反応を獲得した後、公式旗艦店へ移行し、本格展開につなげる導線を設計する。

そのなかで天猫国際が前面に押し出すのが「探物」だ。探物とは、中国進出前のテストマーケティング兼インキュベーション機能のことで、ブランド育成の第一歩と位置付ける。海外ブランドの商品を中国消費者へ72時間以内で届ける直送モデルであり、天猫国際 天猫探物の旭宏総責任者は「従来の越境ECが出店や在庫投資を前提としていたのに対し、探物は市場投入のハードルを下げ、需要検証を先行させる仕組み」と説明する。

中国の消費構造の変化も、こうしたモデルを後押しする。旭氏は、「中国消費の中心が従来のモノのアップグレードから変化しつつある」とみる。現在は、「気分や満足感を重視する『情緒価値』と、自身の身体や生活の質を高める『健康価値』の2方向へ支出が向かっている」という。健康支出への意識の高まりは、長時間労働や中高年層の増加とも重なる。

その消費を支えるのが、天猫国際を利用する高所得ユーザー層だ。同プラットフォームには4万6000超のブランド、6000超のカテゴリー、90以上の国・地域の商品が集まり、女性ユーザーや高純資産層の比率が高い。さらに、有料会員「88VIP」は約6000万人規模まで拡大し、高頻度・高単価の購買行動を示している。

日本のヘルスケア市場が培ってきた細分化と生活者起点の発想は、中国市場でも成長余地を持つ。しかし、その価値を現地消費者にどう伝え、需要につなげるかが課題だ。探物は、販売前の需要検証とブランド育成を通じ、日本ブランドが中国市場への適応力を見極める場として存在感を高めそうだ。