ファンケルは、スキンケアでよく使われる「ハリ感」という言葉に着目し、その意味の違いを調べる研究を行った。「ハリがある肌」と聞くと、多くの人が理想的な肌を思い浮かべる。しかし実際には、「ふっくら」「もっちり」「ピンとした」「うるおいのある」など、人によってイメージする“ハリ”はさまざまだ。同社は、この言葉の違いが、お客の求める肌と実際の使用感のズレにつながるのではないかと考え、研究を進めた。
その結果、「ハリ感」は少なくとも五つのグループに分かれ、それぞれが結び付く肌の質感も異なることを明らかにした。
この研究成果は、お客が求める“理想の肌”により近いスキンケア商品の開発や、分かりやすい製品特長の表現につながることが期待される。なお同研究は、「第27回日本感性工学会大会」で発表し、優秀発表賞を受賞した。
ステップ1:「ハリ感」を形容する表現を五つのグループに分類
最初に、肌のハリ感を形容する表現を社内アンケートとインタビューにより約100語集め、「化粧品使用後のハリ感を表す言葉として適切か」を起点に、その中から代表的な29語を選定した。それらの言葉の意味の近さを分析したところ、「ハリ感」は以下の五つのグループに整理できることが分かった(階層的クラスター分析〈※1〉使用:図1)。
1.弾力のあるグループ(例:「押し返す弾力がある」「押し返す力がある」「跳ね返る力がある」)
2.ふっくらとしたグループ(例:「ふっくらとした」「適度な硬さのある」)
3.ピンとしたグループ(例:「ピンとした張りのある」「たるみがない」)
4.もっちりとしたグループ(例:「もっちりとした」「指・手のひらへの吸いつきがある」)
5.うるおいのあるグループ(例:「みずみずしい」「うるおいのある」)
つまり、「ハリ感」は一つの感覚ではなく、複数の異なる肌印象を含む言葉であることが明らかになった。
ステップ2:グループ分けした言葉をマッピングし、言葉同士の関係性を可視化
次に、グループ分けした言葉を、意味の近さに基づいて2次元空間上にマッピングした(多次元尺度構成法〈※2〉使用:図2)。これにより、各グループの配置や言葉同士の近さを可視化した。
ステップ3:ハリ感を表現する言葉と実際の肌の質感の結び付き評価
最後に、「ハリ感の違いが、具体的にどのような肌の質感と結び付いているのか」を調べた。官能評価試験で得られたスコアを回帰分析(※3)した結果(表1)、以下が得られた。
・「ふっくら」「うるおい」は、柔らかさと関係が強い
・「もっちり」は、しっとり感と関係が強い
・「ピンとした張り」は、柔らかさとは逆の関係がある
これは、同じ「ハリがある肌」でも、人によってイメージしている肌状態が異なることを示している。例えば、ある人は“柔らかくてうるおった肌”を理想のハリ肌と感じ、別の人は“引き締まってたるみのない肌”を理想のハリ肌と感じている可能性があることを示す。
化粧品では「ハリ」という言葉がよく使われるが、その受け取り方は人によって異なる。同研究によりこの違いを明らかにできたことで、「ハリ感」という感覚的な言葉を、「言葉の意味構造」「実際の肌の質感」の両面から整理・可視化することができた。この知見を活用することで、今後はお客が求める肌のイメージに合わせて、お客が使う言葉の違いを正しく理解する、目指すハリ感に応じた製品設計・表現を行う、といった効果実感とコミュニケーションの精度を高めた製品開発や情報発信が可能になると考えられる。
※1階層的クラスター分析:データ間の類似度に基づき、対象を階層的にグループ分けする統計手法。
※2多次元尺度構成法:データ間の類似度に基づき、対象同士の位置関係を2次元や3次元の空間上に表現する手法。
※3回帰分析:ある要因(説明変数)が結果(目的変数)にどう影響するかについて、数式モデル(回帰式)を用いて予測・分析するための統計手法。




























