花王スキンケア研究所は、独自の長期肌実態調査(ウルトラ肌解析™データベース)を活用し、106名の5年間の肌変化を解析した。その結果、40歳前後と50代半ばに肌状態が大きく変化することを見いだした。(図1)この結果は、肌の曲がり角が2回あることを示していると考えられる。

図1.106名の5年間の顔の肌の見た目変化の分布

今回の研究成果は、2024年11月18~20日に兵庫県にて開催された第2回日本化粧品技術者会学術大会で発表し、最優秀ポスター発表賞を受賞した。

肌の状態、見た目(シミ・ソバカスなどの色ムラ、シワ、たるみなど)は年齢に伴って変化するが、その変化の仕方は個人によって大きく異なる。そこで花王は、1992年から同一人物の肌性状や意識などの経年変化を継続的に追跡調査し、網羅的データベース「ウルトラ肌解析データベース」を構築している。このデータベースは、長期的な個人の肌の変化を正確に把握し、さまざまな切り口から人の肌と意識の実態を解明することが可能で、これらの経年変化に関する科学的知見を蓄積することが、化粧品開発において大変重要である。

高齢化社会が進む中で、年齢を重ねることを前向きにとらえるウェルエイジングの考え方が広く受け入れられつつある。ウェルエイジングを実現するためには、自分の肌状態を正しく認識し、価値観やなりたい姿に合ったケア法を選択することが重要だ。そこで今回花王は、加齢による肌の見た目の変化パターンを解明するべく、「ウルトラ肌解析データベース」を活用し、同一人物の5年間の変化について評価を行った。

花王は、このデータベースの中から、2010年に16~74歳だった日本人女性106名について、2010年と2015年の顔画像を比較した。顔を全方位から解析するため、3Dの顔画像をパーツの位置が同一の平面顔画像に変換し(図2)、10年と15年の個人の差分画像(顔画像の変化データ)を作成した。

図2.3Dの顔画像を平面の顔画像に変換

経年による肌の見た目の変化の特徴を把握するため、106名分の差分画像データを用いて、顔画像の特徴を抽出する主成分分析の手法のひとつであるeigenface法で解析を行った。さらに、統計的な処理を加えることで、参加者の経年変化特徴を表す第1、第2主成分を得た。第1、第2主成分得点をプロットした結果、U字型に分布している様子がみられた(図3)。

図3.参加者の主成分得点

これらのデータの意味を解釈するために、参加者全員の主成分得点を用いてクラスタ分析を行ったところ、三つのグループ(A、B、C)に分かれた(図4)。また、各グループの特徴を年齢と、目視による見た目(テクスチャ)変化で確認した。その結果、グループAは比較的若い年代(平均年齢31.4歳)で構成され肌の変化がほとんど見られず、グループB(平均年齢47.8歳)では、小さなシミやちりめんジワなどの比較的小さな見た目の変化が、グループC(平均年齢61.6歳)では、はっきりとしたシワやたるみなどの比較的大きな見た目の変化が多いことがわかった(図5)。

図4.クラスタ分析による3つのグループの分布と特徴

図5.グループ別の変化パターンのイメージ

以上の結果より、肌の見た目の経年変化は、量と質が異なる三つのグループに分けられ、各グループの平均年齢の境界となる40歳前後と、50代半ばに肌の見た目の変化の様子が変わる二つの「曲がり角」があることが明らかになった。