近年、「フォーエバー・ケミカル(永遠の化学物質)」と呼ばれる「PFAS(ペルフルオロおよびポリフルオロアルキル化合物)」に対して懸念が高まっている。PFASとは人工的な有機フッ素化合物の総称で、水や油をはじき、熱に強く、分解されにくい特徴を持つ。OECDの定義で1万種類以上あり、工業製品や撥水性の高い衣類、台所用品など、幅広い製品に使われてきた。しかし、環境・人体に蓄積されやすく、発がん性など人への健康被害が近年知られるようになり、PFASの使用規制に向けた動きが世界で高まっている。

日本でも、PFASが消火器や焦げ付かないように加工された調理器具などに使われてきたことは知られているが、化粧品業界で用いられてきたことは、まだ一般にはそれほど知られていない。製品をよりなめらかにし、耐久性・耐水性を高める効果があり、「水に強い」「長持ち」というファンデーションやリップ製品、マスカラ、マニキュア、シェービングクリームなどの商品に添加されてきた。化粧品業界で用いられるPFASの量は決して多くないが、肌に直接使用する製品であることから、微量でも人体にPFASを蓄積させてしまう可能性が近年指摘されている。たとえば、2016年の韓国の研究では、化粧品の頻繁な使用によって、母乳中のPFAS濃度が上昇することが示唆されている。20年の米国のある研究では、ファンデーションを日常的に使用する女性のPFASの血中濃度が高かったという。

耐水性が高いPFASは、特に多くのウォータープルーフマスカラに添付されている
©Breakingpic/Pexel

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