ファンケルは1994年に健康食品事業を立ち上げた。それから30年、同社はサプリメントという言葉を初めて広告展開したり、いまでは当たり前のアルミ袋をサプリメントに初採用するなど、健康食品市場の発展をけん引。現在、機能性表示食品を中心に約140品を販売しており、昨今の紅麹問題を強く憂慮している。だから、健康食品業界のパイオニアの責任を果たすために、報道関係者に対して「健康食品 安心・安全セミナー」を開催した。
セミナーは2部構成で、ファンケルの力の入れようが分かる。第一回は6月19日に実施したファンケル総合研究所の見学会である。同研究所は、化粧品、サプリメントの基礎研究から応用研究までを189人の研究者で担当している。サプリメント領域では、2015年に始まった機能性表示食品の研究開発に力を入れている。
その中で重要な要素が品質と安全性を担保すること。研究や生産の各プロセスで独自の厳格な基準を設けている。一例を挙げると、安全な原料の選定では、八つの検査を実施。多種多彩な分析機器を用いて、原料一つ一つの有害物質混入の有無などを検査している。工場生産時の品質安定もテーマの一つで、製剤重量や崩壊性などを考慮した処方や製法を研究し、開発している。
顧客の声に即応する体制を整えているのも、生活者の不の解消に取り組んできたファンケルらしい側面だろう。具体的には18年に設置した健康食品専門家評議会は、ファンケルのサプリメントを服用した消費者から体調不良などの申し出があった場合、外部有識者(医師や薬剤師など)が客観的に因果関係などを評価する。
そもそも同社は消費者への情報開示に積極的な企業だ。例えば、08年からサプリメントなどの原料は厳選地と加工地を自社サイト内で公開。これは大手企業で初の取り組みだ。服用中の薬との相性が分かる検索サービス、飲んでいるサプリメントが分かるようにお薬手帳に貼るシール、医療従事者向け案内カードなども含め、ファンケルの取り組みは消費者から大きな反響を得ており、ブランド、商品への信頼性アップに寄与している。
セミナーの第二回は、7月4日の三島工場見学会である。ファンケルグループのものづくりを担うファンケル美健の全6工場のうち、三島工場はサプリメントの主力生産拠点である。21年に竣工し、47品目を生産している。
三島工場の見学をリニューアル。ファンケルの品質へのこだわりがよく分かる
ファンケル美健は、全工場で医薬品の製造工場に義務化されているGMP認証を取得している。原材料の搬入、商品の製造と出荷など、製造工程全体の品質が保たれていることを示している。三島工場は医薬品生産工場と同等の空調管理を行っており、FSSC22000(食品安全の国際規格)も取得済みだ。
ファンケル美健の安全性と品質に対する意識は強く、製造工程の細部まで精査し、対策を打っている。例えば、原料と製造ロット別の検査では、製造工程、充塡工程、包装工程の各プロセスで品質を評価する。出荷前の品質検査では、測定機器はもちろん、手練れの社員の五感を使った検査を行う。製造委託先工場も例外ではなく、ファンケルの品質基準を満たしていることを精査する。
三島工場は22年3月に始めた工場見学をリニューアルした。より多くの生活者に親しみを持ってもらうために、キャラクターやサプリメントをモチーフとした造作物を見学ルートの各所に設置。三島工場のオリジナルキャラクター「タンクリーン」は、工場を案内する形で一緒に見学ルートを進んでいく。また、ファンケルのサプリメントの特徴である「体内効率設計」を視覚的に体験できるように、簡易的な実験コーナーを設置。サプリメントが崩壊する様子を紹介することで、個々の成分の持続性や吸収性はもちろん、配合バランスなどを研究し、製品設計に取り組んでいることを伝えていく。工場見学は7月24日から一般公開を開始。これもファンケル健康食品事業が安心・安全の取り組みに自負心を持っている証左と言えるだろう。★
月刊『国際商業』2024年09月号掲載