訪日外国人旅客数(日本政府観光局の推計)は、2024年3月に単月として初の300万人の大台に乗った。翌4月も300万超となり、インバウンドはコロナ前の活気を取り戻している。しかし、その中身は大きく異なる。例えば、中国本土からの訪日客は本格化していないこと。ASEAN、欧米からの旅行者が増え、訪日客の構成比が変わっている。二つ目は大量に商品を買う〝爆買い〟が起きないことだ。このような市場環境の変化を受け、日本が取り組むべきことは何か。日本インバウンド連合会の中村好明理事長に聞いた。
インバウンドなくして日本経済は成り立たない
――まず日本経済におけるインバウンドの重要性を改めてお聞かせください。
中村 日本は貿易立国である、と認識している方は多い。一方で、昨今の経済状況から貿易収支額を落としていると感じている方も増えていると思います。では現実はどうなのか。国連貿易開発会議(UNCTAD)が23年10月に公表した貿易収支額の世界ランキングにおいて、日本は約1500億ドルの赤字で192位。まったく貿易立国ではありません。一方で、インバウンド、つまり訪日外国人の日本における消費額を示す旅行収支を見ると、14年までは日本人の海外旅行時の支出額(アウトバウンド)の方が多かったものが、15年には逆転、つまり黒字化しています。以降、コロナ禍で額こそ低下しましたが、旅行収支は黒字が続いています。折からの円安基調も大きな追い風となり、今後は再び数兆円規模まで拡大することが予想されます。日本の根幹を成していた貿易収支の減少をカバーする分野として、インバウンドが重要であることは間違いありません。
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