一般社団法人油脂工業会館は5月14日、第84回の定期公演会を東京・日本橋の油脂工業会館ビルで開催。エシカル協会代表理事、日本ユネスコ国内委員会広報大使で、TBS系列「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンターとして世界各地を旅した経験を持つ末吉里花氏が講師となり、「エシカルは新しい幸せのものさし」と題して講演した。

エシカルとは一般的に「倫理的」を意味するが、末吉氏はエシカルについて「人・地球環境・社会・地域に配慮した考え方や行動であり、環境・社会・経済のそれぞれの側面をホリスティック(包括的)に見ること」と説明。世界中で深刻な気候変動や人権侵害などの問題が続いている中、エシカルな視点の必要性を指摘した。

末吉氏はエシカル消費について「顔の見える、物語がある消費」と定義。エシカル消費の分類について、環境への配慮(再生可能エネルギー、認証ラベル製品、リサイクルなど)、社会への配慮(フェアトレード製品、障がい者支援につながる製品、寄附付きの製品など)、地域への配慮(地産地消、地元商店での買い物など)の三つを挙げた。

エシカル消費の具体事例については、認証ラベル・マークがついた製品を購入するほか、来客用のコーヒーをフェアトレード認証品に変えるなど社内でも小さなことから取り組めると紹介。生活者として企業に応援の声や率直な意見を届けることもエシカルな貢献につながると説明した。

さらに持続可能な街づくりを先進的に進めるスウェーデン・マルメ市を視察した際の様子を報告。100%再生可能エネルギーを活用したバスが走っていたり、生ゴミを〝生資源〟と呼んでバイオエネルギーとして活用するなど、街のあちこちにエシカルな考え方が浸透しており、「簡単にどんな人でもエシカルに参加できるシステムが大事」と語った。

また、エシカル協会が日本の消費者に行ったアンケート結果についても報告。エシカルな商品・サービスについて「これまで購入しており、今後も購入したい」人は約3割、「これまで購入したことはないが、今後は購入したい」人は約6割いる。一方、エシカルな商品・サービスを購入したくないと考える理由は「どれがエシカルな商品・サービスか分からない」「本当にエシカルかどうか分からない」が上位に挙がるとし、「商品・サービスの背景を伝えなければ買ってもらえない」(末吉氏)と述べた。

講演会の最後に末吉氏は「行動し続けることで、(世界的な)問題を解決する一部になりたい」と語り、エシカルな活動への理解・協力を呼び掛けた。

月刊『国際商業』2024年07月号掲載