花王の2023年12月期通期業績は、売上高は前年比1.2%減の1兆5326億7900万円と減収。営業利益は、構造改革費用を547億円計上したことにより、前年比45.5%減の600億3500万円、税引前利益は44.9%減の638億4200万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は49.0%減の438億7000万円と利益の各段階で減益となった。

セグメント別の業績は、コンシューマープロダクツ事業が、売上高1.4%増の1兆2103億円、コア営業利益は94億円増の887億円。ケミカル事業が売上高9.0%減の3661億円、コア営業利益が48億円減の248億円となった。

コンシューマープロダクツ事業のうち、ハイジーン&リビングケア事業の売上高は前年比1.2%増の5225億円。ファブリックケア製品は、日本では衣料用洗剤で戦略的値上げの実施と新製品・改良品の発売が寄与し、売り上げは市場伸長を上回り、シェアも拡大した。また、下期に改良と値上げを実施した衣料用漂白剤「ワイドハイター」が好調に推移し、柔軟仕上げ剤は回復傾向にある。ホームケア製品の売り上げは、ほぼ前期並み。日本では、食器用洗剤「キュキュット」の改良等により、売り上げ、シェアを伸ばしたほか、新しいトイレ掃除を提案した「トイレマジックリン」の新製品が好調に推移した。サニタリー製品の売上高は、0.6%減の1734億円となった。生理用品「ロリエ」は、日本では共感型コミュニケーションによりロイヤルユーザーが増加すること等でブランド力が向上し、売り上げ、シェアが伸長。中国ではALPS処理水の影響で販売促進活動を抑制したことの影響を受けた。ベビー用紙おむつ「メリーズ」の売り上げは前期を下回った。日本では、戦略的値上げを実施したが、中国向けの越境ECが苦戦し、売り上げは前期を下回った。中国では市場縮小や厳しい競争環境により、売り上げは前期を下回った。インドネシアは好調に推移した。また、2023年12月11日にエステーと猫用システムトイレ「ニャンとも清潔トイレ」に関する事業の譲渡契約を締結した。

ヘルス&ビューティケア事業の売上高は6.3%増の3929億円。スキンケア製品の売り上げは前期を上回った。日本では人流の回復に加え、猛暑に対応した「ビオレ」のUVケア製品等のシーズン品やメイク落としの新製品が貢献し、売り上げ、シェアともに伸長した。米州では、売り上げは前期を上回るとともに、23年11月にプレミアムスキンケアブランド「BondiSands(ボンダイサンズ)」を有するBondiSandsAustraliaPtyLtdの買収を完了、連結子会社とした。

ヘアケア製品の売り上げは伸長。日本では「エッセンシャル」の新製品・改良品が順調に推移したほか、11月に発売した「ケープ」の新製品が貢献し、売り上げ、シェアともに伸ばしている。欧州では、売り上げは前期を上回った。ヘアサロン向け製品は、米国の「ORIBE」が、Eコマースを中心に好調に推移。パーソナルヘルス製品は、売り上げは前期並みだった。日本では、新しいマーケティング施策により「めぐりズム」の売り上げは伸長したが、入浴剤は市場縮小の影響を受けた。

ライフケア事業の売上高は、1.0%増の563億円。業務用衛生製品の売り上げは、前期を上回った。日本では外食産業や宿泊施設等で厨房用洗浄剤や客室消耗品の需要が高まったが、消毒剤の市場縮小により売り上げはほぼ横ばいだった。米国では対象業界の回復、新規顧客の獲得等で売り上げは前期を上回った。健康飲料は、特定保健用食品「ヘルシア」の売り上げは減少した。

化粧品事業の売上高は、5.1%減の2386億円。日本では、構造改革による返品の計上や韓国のトラベルリテールにおける代理購買抑制等の影響を受け、売り上げは前期を下回った。コア売上高は、「KANEBO」や「KATE」等のグローバル戦略ブランド「G11」が好調を維持し、前期を上回った。中国の売り上げは、ALPS処理水の影響によりKOL(キー・オピニオン・リーダー)の活動自粛や販売促進活動の抑制等により大幅に前期を下回った。欧州では、市場が低迷する中、「MOLTONBROWN」の新製品が順調に推移するとともに、「SENSAI」はリニューアルした新製品や既存品のプロモーションが奏功し、売り上げは前期を上回りました。

24年12月期通期業績は、売上高3.1%増の1兆5800億円、営業利益116.5%増の1300億円、税引前利益は105.2%増の1310億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は123.4%増の980億円で、増収増益を予想している。