花王の2023年12月期第3四半期業績は、売上高は前年同期比0.2%減の1兆1258億8300万円、営業利益34.1%減の507億500万円、税引前四半期利益35.9%減の545億8200万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益44.2%減の325億4200万円だった。売り上げは、コンシューマープロダクツ事業は計画を上回ったものの、ケミカル事業が欧米市場の需要回復が遅れている影響等を受け計画を下回ったことが響いた。利益は構造改革費用の計上などにより大幅な減益となった。

事業別に見ると、コンシューマープロダクツ事業は売上高3.1%増の8835億円。営業利益は減損損失を含む構造改革費用201億円の計上の影響等により、181億円減の315億円、コア営業利益は戦略的値上げの実施により原材料価格の上昇を吸収したこと等により20億円増の516億円だった。

そのうちハイジーン&リビングケア事業は売上高2.3%増の3792億円。ファブリックケア製品は、売り上げは前年同期に比べて増加した。衣料用洗剤で戦略的値上げの実施と新製品・改良品の発売が大きく貢献し、売り上げ、シェアを大きく伸ばした。ホームケア製品の売り上げはほぼ前年同期並み。食器用洗剤「キュキュット」は、日本では値上げを実施するとともに改良を実施し売り上げ、シェアを伸ばした。

サニタリー製品は、生理用品「ロリエ」が日本では共感型コミュニケーションによりロイヤルユーザーが増加すること等で前年同期を上回ったが、中国では販促活動抑制の影響を受けた。ベビー用紙おむつ「メリーズ」は、売り上げは前年同期を下回った。日本、インドネシアでは順調に推移したが、中国では市場縮小や厳しい競争環境により売り上げは前年同期を下回った。

ハイジーン&リビングケア事業の営業利益は、ベビー用紙おむつ事業で減損損失を含む構造改革費用を187億円計上し、52億円、コア営業利益は、ファブリック&ホームケア製品で、原材料価格の上昇に対して戦略的値上げを積極的に実施したことで利益率が改善、239億円となった。

ヘルス&ビューティケア事業の売上高は6.5%増の2885億円。スキンケア製品は、売り上げは前年同期を上回った。日本では、「ビオレ」のUVケア製品等のシーズン品やメイク落としの新製品が貢献。欧米でも、今年度に販売を開始したUVケア製品が計画を上回った。ヘアケア製品の売り上げも前年同期を上回った。日本では厳しい競争環境の中、「エッセンシャル」の新製品・改良品が順調に推移。ヘアサロン向け製品は、米国の「ORIBE」がEコマースを中心に堅調に推移した。パーソナルヘルス製品は、新しいマーケティング施策により「めぐりズム」の売り上げが伸長した。営業利益は303億円、コア営業利益は306億円だった。

ライフケア事業の売上高は1.2%増の408億円。業務用衛生製品は、日本では外食産業や宿泊施設等に向けた製品の需要が高まったが、消毒剤の市場縮小により売り上げは減少。米国では対象業界の伸長に伴い売り上げも拡大した。健康飲料は、特定保健用食品「ヘルシア」の売り上げが減少した。営業利益は12億円の欠損だった。

化粧品事業は、売上高0.2%減の1751億円。日本では市場が回復してきた中、「KANEBO」や「KATE」等のグローバル戦略ブランド「G11」が前年同期に対して二桁伸長を継続し好調を維持したが、韓国のトラベルリテールにおいて代理購買抑制の影響を受けた。また、中国では、KOLの活動自粛や販売促進活動の抑制等により前年同期を下回った。欧州では、インフレにより消費が冷え込む中、「MOLTON BROWN」の新製品が順調に推移し、売り上げは前年同期を上回った。営業利益は、構造改革費用を12億円計上したことにより28億円の欠損、コア営業利益も16億円の欠損だった。

コンシューマープロダクツ事業のエリア別売り上げを見ると、日本は、3.0%増の5666億円、アジアは3.3%減の1701億円、米州は10.6%増の919億円、欧州は13.6%増の549億円となった。

ケミカル事業の売上高は9.5%減の2750億円、営業利益は、景気回復の遅れに伴う需要の減少と油脂製品の利幅縮小の影響が続いており、185億円となった。

23年12月期通期業績は、売上高1.9%増の1兆5800億円、営業利益45.5%減の600億円、税引前利益47.3%減の610億円、親会社の所有者に帰属する当期利益52.3%減の410億円と前回公表数値を据え置いた。