花王の2022年12月期通期業績は、売上高は前年比9.3%増の1兆5510億5900万円と増収となったものの、営業利益は23.3%減の1100億7100万円、税引前利益は22.8%減の1158億4800万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は21.5%減の860億3800万円と利益の各段階で減益となった。原材料価格高騰が460億円と影響を大きく受けた。

セグメント別の業績は、コンシューマープロダクツ事業は、売上高4.3%増の1兆1933億円、営業利益は29.6%減の793億円。原材料価格の高騰や物流費の上昇等が影響し減益だった。

コンシューマーリサイクルプロダクツ事業のうち、ハイジーン&リビングケア事業の売り上げは4.0%増の5165億円。ファブリックケア製品は、売り上げは前期を上回った。日本では、原材料価格高騰の影響を最小化するため、衣料用洗剤を中心に戦略的な値上げを実施するとともに、マーケティング活動を強化したことによりシェアが伸長し、順調に推移したが、柔軟仕上げ剤は厳しい競争下で苦戦した。アジアでは売り上げは前期を下回った。ホームケア製品は、日本では外出機会が増えたことで使用する機会等が減り市場は縮小したが、売り上げは前期並み。なかでも食器用洗剤「キュキュット」は、シェアを大きく伸長させた。サニタリー製品は、売り上げは前期を下回った。生理用品「ロリエ」は、日本やアジアでは販売促進活動の強化等により好調に推移。ベビー用紙おむつ「メリーズ」の売り上げは前期を下回った。中国では市場縮小の影響等があり前期を下回った。インドネシアでは売り上げは好調を維持し、日本では市場が縮小する中、前期並みとなった。営業利益は、原材料価格高騰が大きく影響し、40.8%減の307億円。

ヘルス&ビューティケア事業の売上高は4.2%増の3695億円。スキンケア製品は、売り上げは前期を上回った。日本では猛暑の影響で、UVケア製品等のシーズン品の売り上げは好調に推移し、シェアも大きく伸長した。米国ではインフレによる消費減退の影響を受け、売り上げは前期を下回った。ヘアケア製品は、売り上げは前期を下回った。欧米のヘアサロン向け製品は、米国の「ORIBE(オリベ)」が、コアのサロンチャネルに加え、Eコマースも大きく伸長し好調を維持。日本のマス向け製品は、売り上げは前期を下回った。パーソナルヘルス製品の売り上げは、前期を下回った。「めぐりズム」は順調に売り上げを伸ばしたが、入浴剤は前期を下回った。営業利益は、原材料価格高騰等が大きく影響し、30.4%減の346億円だった。

ライフケア事業の売上高は5.1%増の557億円。業務用衛生製品は、日本では徐々に経済が正常化し、外出機会が増加したことにより市場は回復。特に外食産業や宿泊施設等で厨房用洗浄剤や客室消耗品の需要が高まり、売り上げは伸長した。米国では対象業界の回復、新規顧客の獲得等で、売り上げは前期を上回った。健康飲料は、特定保健用食品「ヘルシア」で、SNSを使った生活者とのつながりを強化し、Eコマースでのロイヤルユーザー拡大が進んだが、既存量販店での落ち込みをカバーすることはできず、売り上げは前期に比べて減少。営業損失は、原材料価格高騰が影響し、0億円となった。

化粧品事業の売上高は5.1%増の2515億円。日本では、市場が徐々に回復する中、「KANEBO」や「KATE」等のグローバル戦略ブランド「G11」に集中的に投資し、売り上げ・シェアは前期を上回った。特に、「KATE」は「リップモンスター」が好調を維持し、メイク市場全体でブランドシェアNo.1を継続。中国では、感染症拡大による都市封鎖やその後の市場の冷え込みに加え、ローカルメーカーの台頭や流通チャネルの変化等の影響を大きく受け、売り上げは前期を下回った。欧州では、インフレによる景気減速が影響し売り上げは前期並みだったが、「SENSAI」や「モルトンブラウン」のシェアは伸長した。営業利益は、88.0%増の141億円。

ケミカル事業の売上高は28.1%増の4025億円。油脂製品では、天然油脂価格の上昇に伴う販売価格の改定に努めたことも貢献し、売り上げは伸長したが、年末にかけて顧客の在庫調整の影響を受けた。機能材料製品は、自動車関連分野での需要減の影響を受けたが、原料価格上昇に伴う販売価格の改定を進めたこともあり売り上げは伸長した。情報材料製品は、トナー・トナーバインダーは需要の回復を着実に捉えて伸長した。営業利益は、市況の変動による在庫の評価損の計上もあり、0.4%減の295億円となった。

23年12月期通期業績は、売上高1.9%増の1兆5800億円、営業利益9.0%増の1200億円、税引前利益4.4%増の1210億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は2.3%増の880億円と増収増益の見通し。