花王の2021年12月期通期業績は、売上高は2.7%増の1兆4187億6800万円と増収となったが、営業利益は将来の成長に向けた戦略転換のために、ベビー用紙おむつ事業の減損損失45億円、棚卸資産整理損25億円を計上したこともあり18.3%減の1435億1000万円、税引き前利益が13.8%減の1500億200万円、親会社の所有者に帰属する当期純利益は13.1%減の1096億3600万円と減益。利益は各段階とも2期連続の減益となった。

事業別にみると、ハイジーン&リビングケア事業の売上高は1.3%減の4968億円だった。ファブリックケア製品では、衣料用洗剤「アタック」は改良品を発売するとともに、集中的にマーケティング投資をすることで、ブランドイメージが向上し、トップシェアを維持した。ホームケア製品では、浴室用洗剤は、新製品「バスマジックリンエアジェット」を昨年9月に発売し、シェアを大きく獲得。アジアでは安心、衛生の分野を強化するため新しく「マジックリン」の消毒剤を6月に発売し、衛生関連製品を中心に順調に推移した。サニタリー製品は、生理用品「ロリエ」はほぼ横ばいに推移。日本では外出自粛の影響で市場が縮小し売り上げは減少したものの、中国ではEコマースの強化等により順調に売り上げとシェアを伸ばした。ベビー用紙おむつ「メリーズ」は、インドネシアでは8月に高付加価値品を発売したこともあり、売り上げは大きく伸長した。日本ではプレミアム価格の新製品が順調に推移した。中国では上期にブランド価値向上のための施策を行い、8月には成長著しいスーパープレミアム市場に新製品を投入して、ブランド再生のための改革を進めた。また、中国での生活者ニーズや事業環境の変化に迅速且つ効果的に対応するため、現地生産を強化する方針に変更しました。これにより、日本の生産設備に係る減損損失を45億円計上した。営業利益は、原材料価格高騰や特需の反動減に伴う費用追加および減損損失等により、34.9%減の518億円となった。

ヘルス&ビューティケア事業の売上高は2.2%減の3545億円。スキンケア製品では、日本では前期に急速に拡大したハンドソープや手指消毒液の市場が大きく縮小したため、売り上げは減少したが、コロナ禍前の2019年度に比べてシェアは大きく伸長した。またUVケア製品等のシーズン品は、日本およびアジアの外出自粛や天候不順の影響を大きく受けた。米州ではコロナ対策と経済の両立を図る政策により市場は回復傾向にある中、外出機会増加に向けた新しい提案等を実施したが、売り上げは前期をわずかに下回った。ヘアケア製品では、日本のマス向け製品は、新製品を発売し市場の活性化に努めたものの、十分に差別化を図ることができず売り上げは減少。一方でヘアサロン向け製品の売り上げは大きく伸長。米州では、Eコマースで「Oribe(オリベ)」が好調に推移した。パーソナルヘルス製品の売り上げは、日本で巣ごもり需要により入浴剤が好調に推移し、ほぼ前期並み。営業利益は、日本の特需の反動減や天候不順による減収等により、17.9%減の497億円だった。

ライフケア事業の売上高は1.7%増の530億円。業務用衛生製品は、日本では、衛生管理や感染症対策が特に必要な医療関連施設や飲食店等で、手指消毒液等の継続的な需要があったが、外出・移動制限や飲食店等の休業要請・時短営業が大きく影響し、売り上げは前期を下回った。米州では顧客への取扱量の拡大や対象業界の景気回復により、前期を大きく上回った。健康飲料は、特定保健用食品「ヘルシア」が、巣ごもり需要を背景にEコマースで売り上げを伸ばしたが、度重なる緊急事態宣言の延長等により市場が縮小し、売り上げは前期に比べて減少した。営業利益は、23.4%減の36億円だった。

化粧品事業の売上高は2.5%増の2393億円。日本では、構造改革を強力に推進する中、オンラインカウンセリングや自社運営のEコマースの始動など顧客とブランドとの絆づくりに注力。また、コロナ禍でマスクの着用が常態化している生活の中での新提案や様々なデジタル施策により、「KATE」がメイクブランドでトップシェアを獲得する等ヒット商品も誕生させたが、繰り返す緊急事態宣言等による市場回復の遅れの影響を大きく受けた。アジアでは、中国で「フリープラス」や「キュレル」がEコマースを中心に引き続き好調に推移したほか、海南島での免税取引を開始する等、プレステージ化粧品の展開を本格的に始動させた。欧州では、OMOの推進により「モルトンブラウン」や「SENSAI」の売り上げが大きく伸長した。営業利益は212.5%増の75億円だった。

その結果、これら4事業から成るコンシューマープロダクツ事業全体では、売上高は0.7%減の1兆1437億円、営業利益は23.5%減の1126億円だった。

ケミカル事業の売上高は16.7%増の3143億円。油脂誘導体製品等が堅調に推移した。営業利益は6.9%増の296億円だった。

地域別売上高は、日本が3.6%減の8563億円。ヘルス&ビューティケア事業が手指消毒剤など衛生関連製品の前年の反動などもあり9.9%減、化粧品事業も6.6%減と苦しい状況が続く。

一方海外は押しなべて堅調。アジアが12.2%増の2852億円。化粧品事業、ライフケア事業がけん引役になった。米州は15.0%増の1452億円、欧州は16.3%増の1320億円といずれも好調だった。

22年12月期業績は、売上高が5.0%増の1兆4900億円、営業利益が11.5%増の1600億円、税引き前利益が6.7%増の1600億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は6.7%増の1170億円を見通す。