百貨店の化粧品売り場において、リクルートが運営する受付管理アプリ「Airウェイト」の導入が増加している。百貨店にカウンターを構える化粧品ブランドは、カウンセリングやタッチアップといった満足度の高い充実した接客を提供。お客もそうした店頭体験を期待していることが多いが、コロナが5類に移行して以降、インバウンド客も含め店頭を訪れるお客が増加。ブランドが提供するサービスと来店客が期待する接客にギャップが生じ、不満やクレーム、最悪の場合はブランド離反にもつながりかねないリスクも高まっており、よりスムーズな店頭運営が求められるようになっている。そうした中、待ち時間の可視化を実現する「Airウェイト」に注目が集まっている。
「Airウェイト」は、煩雑だった受付業務をサポートする受付管理アプリ。紙台帳による受付業務をiPadとプリンター1台に置き換えることで、番号券による順番待ち管理を可能にする。受付後、店頭から離れたお客を自動で呼び出す仕組みも備えており、店頭行列や無駄な待ち時間などを解消。また、呼び出し番号ディスプレイを利用することで、混み合う待合室でもスムーズにお客を案内できる。メールやスマートフォンPUSH通知(Androidのみ)での呼び出しなど便利な機能を備えており、店頭の混雑や販売機会ロス、店舗スタッフの精神的なプレッシャー等につながるウェイティングの〝負〟を解決し、効率的な店頭運営が期待できるシステムだ。多言語対応したシステムとなっており、インバウンド対応も可能だ。
化粧品ブランドでの導入も相次いでおり、直近では資生堂ジャパンがプレステージブランド「クレ・ド・ポー ボーテ」をはじめとした4ブランド95店舗に設置。従来の紙台帳等による受付業務をデジタル化することで、より充実した接客サービスの提供、美容部員の効率的な配置といったメリットが期待できるという。資生堂ジャパンプレステージブランド事業本部デパート営業本部Cle de Peau Beauteデパート営業統括部の奥大治氏は、「待ち時間や順番の可視化が実現し、来店客の満足度を高めつつ、店舗スタッフが接客に集中できる環境づくりが可能になった」と「Airウェイト」導入のメリットを語る。
来店客が来店目的・免税の有無・希望商品などを「Airウェイト」上で入力することができるため、店舗の待ち状況を知らせるだけでなく、呼ばれた後に、接客を受けるおおよその所要時間も想定が可能となっている。2023年1月に「Airウェイト」を導入した後は、店頭行列も一部解消。スムーズな案内が可能になり、美容部員が接客業務により注力できるようになっている。
また、「Airウェイト」の分析データをもとに、混雑する時間帯の分析や実際には来店しなかった方の離脱率なども把握することができるため、シフト体制やスタッフ配置、店舗レイアウト含む店舗経営戦略にも役立てられる。実際、販売機会ロスや売り場配置、ウェイト客がどれくらいいて、そのうちどれくらいのお客に接客を提供したかなど、導入以前は漠然とした説明になりがちだったことが、データを用いて説明が可能になったことで、バイヤーや化粧品売り場担当者とのコミュニケーションの在り方がアップデートされているという。
「待ち時間情報を含むデータをもとに、実際には来店しなかった順番待ち客の離脱率を分析し、店舗経営戦略にも活用できるようになっています」(奥氏)
近年では、訪日外国人の化粧品購買行動が最盛期とは大きく変化。カウンセリング、タッチアップといった日本人が受けているのと同様の接客に対する需要が高まっており、アナログな手法でのウェイティング管理ではお客が望む接客サービスの質の低下につながりかねない。実際、インバウンド最盛期には店頭の混雑を見て離反する日本人客は少なくなかった。「Airウェイト」を導入する意義は大きいと言えそうだ。★
月刊『国際商業』2024年02月号掲載