唯一無二の香りだからファンが生まれる

和の香りの老舗企業、松栄堂の店舗は、想像以上に客層が広い。同社商品を長く愛用する中高年はもちろんだが、20代、30代の姿も少なくない。お客は伝統的な和の香りが特徴の定番品「銘香 芳輪」だけでなく、仏事や部屋用のお線香シリーズ「京線香」、部屋飾りや衣裳のアクセントに用いる「匂い袋 誰が袖」などにも手を伸ばしている。色、素材、形状が多彩な香立、香皿、香炉、香台の売り場に足を止める人も多い。店内の活況について、松栄堂の畑正高社長は「もともと客層は幅広いんですが、人の動きが止まったコロナ禍でECの売り上げが大きく伸びましたから、一段と家庭でお使いになる方が増えたのだと思います」と分析する。

日本におけるお香の始まりは、仏教伝来(538年と552年の説がある)と言われている。日本書紀(595年)には、日本で最も古いお香に関する記述が残っている。お香の最盛期は平安時代で、貴族は複雑に煉り合せた香料の香りを楽しむ「薫物」を生活に取り入れた。「枕草子」や「源氏物語」などの王朝文学に香りの記述が多いのは、そのためだという。現代のお香の主流であるお線香は、江戸時代に普及したもの。線状に作る技術が発達し、利便性が高まり、宗教行事に使用する庶民が増えたからだ。

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