アース製薬は5月29日、東京・有楽町の朝日ホールにおいて「アース虫ケアセミナー~2022~」をリアルとオンラインのハイブリッドで開催。会場には551名が参加、オンラインでは延べ1560名が視聴し、害虫による感染症リスクの実態や、害虫をはじめとした虫に対する正しい対処法を学んだ。

冒頭登壇したアース製薬の川端克宜社長は、「今年は外出する機会も増えることが見込まれるなかで、昆虫と感染症の関係を正しく理解して正しい対策を知る機会にしてほしい」と語った。

アース製薬の川端克宜社長

セミナーは2部構成で実施。第1部では、国立環境研究所生態リスク評価・対策研究室の五箇公一室長が「地球環境変動と新興感染症リスクの拡大」のテーマで、大阪大学大学院医学系研究科感染制御学の忽那賢志教授が「身近な虫に要注意?蚊やマダニによる感染症とその治療」のテーマでそれぞれ講演。

五箇室長は、生物多様性が感染症リスクと結びついていることを説明。その生物多様性にも種の多様性、遺伝子レベルの多様性、生態系の多様性、環境の違いに応じて独自の生態系が進化する景観の多様性などが存在。それらを総じて生物多様性と言っており、その中で人間も存在し、その人間が生み出す社会や文化、芸術といったものが生物多様性の上に成り立っていることを強調した。

そのうえで、乱獲や環境汚染、気候変動などにより生物多様性が劣化しており、それが現在の新型コロナ感染症拡大のような感染症リスクを高める要因になっていることを指摘。以前は厳然と存在した人間と他の動物の生存エリアの境界線が近年では崩れ、それが特定の動物が保有する菌やウイルスが人間社会にも入り込むようになっていることを示し、「それらの動物特有の菌やウイルスの媒介役であるマダニや蚊を忌避する対策が重要」と語った。

国立環境研究所生態リスク評価・対策研究室の五箇公一室長

忽那教授は、マラリアなどの感染症を媒介する蚊が世界で最も人間を死に至らしめている生物であること、また近年、日本においてはマダニが媒介となる重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の感染が西日本を中心に増加傾向にあることなどを説明。その対策の重要性を強調した。

大阪大学大学院医学系研究科感染制御学の忽那賢志教授

第2部では、「貴重映像てんこ盛り!動画で学ぶ『アース害虫講座』」と題し、アース製薬研究開発本部研究部研究業務推進室生物研究課の有吉立課長が登壇。同社の研究所、研究に必要な蚊、マダニの飼育室を紹介するとともに、これらの虫の特徴について説明した。

「これら虫を好きにならなくてもいいですが、今日のセミナーが生態のことをきちんと知って身を守るきっかけになると嬉しい」(有吉課長)

その後は、五箇室長、忽那教授、有吉課長によるトークセッションが実施され、事前に寄せられた質問に回答した。

月刊『国際商業』2022年08月号掲載