花王は、京都大学と2021年1月から、愛媛県西条市の協力のもと進めている「使用済み紙おむつの炭素化リサイクルシステム」の確立に向けた実証実験について、現在の進捗を発表した。
同実証実験は、①使用済み紙おむつの「炭素化装置」の開発②炭素化した使用済み紙おむつの炭素素材への変換――の2点を実現し、CO2排出量削減による環境負荷低減への貢献を目指すもので、23年までに炭素素材への変換技術を確立し、25年以降の社会実装を予定している。
使用済み紙おむつが燃やされる際にCO2が発生するが、炭素化の場合は炭化物に炭素が固定化されるため、発生するCO2を削減することができ、環境負荷低減につながるという。
そうした中、花王と京都大学は、炭化物の解析を進め、炭素を高収率で固定できることを確認。この結果をもとに花王は、介護施設等で利用実績がある既存のおむつ処理装置ならびに生ごみの炭化装置をベースとして、新たな「炭素化装置」の開発を進めた。その後、21年11月、西条市の保育施設に開発した「炭素化装置」を設置。
この「炭素化装置」において、約1カ月間、発生するごみの量、保育士の作業量などを確認したところ、使用済み紙おむつの発生量は、平均で1日7キログラムほどになったという。装置は1日に1回使用、炭素化した使用済み紙おむつは装置内に蓄積され、おおむね月1回の回収が適切という結果となった。保育士は、1日分の使用済みおむつをまとめて「炭素化装置」に入れて作動、月1回炭素化した紙おむつを回収することになるという。
なお、リサイクルシステムに加えて、保育施設でのおむつ提供による保護者・保育士の負担軽減を検証するために、21年8月から11月まで、同実証実験を実施する保育施設にベビー用紙おむつ「メリーズ」を提供。保護者からは「毎日のおむつ準備が不要で助かった」、保育士からは「急いでいる時に手間が省けた」など、共に負担の軽減を確認することができたという。
今後の展開として、保育施設に設置した「炭素化装置」より、炭素化した使用済み紙おむつを回収し、花王と京都大学にて炭素素材へ変換する研究を進め、23年までに変換技術の確立を目指す。また、西条市内での資源化循環システムの構築も検討。25年以降のリサイクルシステムの社会実装に向けて、「炭素化装置」の設置拠点・回収方法などインフラの検討を進める。