ロート製薬は2021年6月8日、天藤製薬の株式67.19%を取得すると発表した。取得額は非公開だが、約90億円と見られている。1921年創立の天藤製薬は、日本の痔疾用新薬の先駆けとなる「ボラギノール」を展開。医療用医薬品、OTCそれぞれの痔疾用剤カテゴリーをけん引する存在だ。目薬、胃腸薬、検査薬などを持つロート製薬は、30年のビジョンの一つにOTCのリーディングカンパニーになることを掲げており、その一環として天藤製薬のM&Aに踏み切った。株式譲渡実行は21年8月31日の予定だ。
ロート製薬が天藤製薬を子会社化したのは、国内と海外それぞれでシナジー効果が見込めるからだ。まず国内については、OTCの主力販路であるドラッグストアへの提案力が強化できる。ロート製薬の売上構成比を見ると、目薬、スキンケア、内服液、検査薬から成るヘルス&ビューティ事業が約9割を占める。天藤製薬の年間売上高は約60億円で、そのうち約6割をOTCで稼いでいるという。小売業がプライベートブランド（PB）を展開しやすい総合風邪薬やドリンク剤、胃腸薬などと違って、痔の治療薬はNBが主流で、ボラギノールは痔の治療薬市場のシェア50%を握っている。痔は受診率や治療率が低く、潜在患者が多い。成長が頭打ちのOTC市場において、今後も疾患啓発次第では、市場の拡大が見込める数少ない疾患領域だ。売り上げが安定している天藤製薬の子会社化は、ロート製薬の事業基盤を強くする。
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