エステーの鈴木貴子社長は、年頭訓示において、好調な業績の今だからこそ新分野・新事業に踏み出すべきだとの決意を強く語り、循環型経済の象徴ともなる同社の取り組みについての期待を示した。以下は、年頭訓示の要旨である。
新年あけましておめでとうございます。
2020 年、新型コロナウイルスで世界は一変しました。新たな常識や習慣が生まれ、価値観も覆されました。消費者の意識は「家」に回帰して、「丁寧で心豊かな暮らし」を求めるようになり、 それにともなう需要変化で当社の既存事業は堅調に推移しました。
活動自粛にもかかわらず 、上期は増収増益で利益は最高値を更新し、社員の皆さんの多くが自社に対する自信と誇りを強めたと思います。
今こそ、「新分野・新市場の探索」に果敢に踏み出す絶好のチャンスです。昨年は、環境意識がより一層高まった年でもありました。当社は、循環型容器回収・ 再利用事業「 Loop 」に参画してきましたが、いよいよこの 3月にガラス製の容器を回収して再度充填する「消臭力 イオン消臭プラス」が発売されます 。
また、トドマツの間伐材から高機能樹木液を抽出し、森の恵みを社会に還元する「クリアフォレスト事業」は、2007 年に始動して今年で14年目に入りますが、まさに循環型であるこの事業が脚光を浴びる時代が到来したと考えます。
一方で新型コロナウイルスは、消費者の強い除菌・ 衛生ニーズを生み出しました。「エステーPRO 」より発売した、持続 性のある除菌・ウイルス除去スプレー 「 Dr. CLEAN+ 」は、目に 見えないウイルスの脅威から消費者を守る新たなカテゴリーであり、次の柱に育てていきます。
コロナ禍で鮮明になったのは、デジタル実装できなければ生き残れないという教訓でした。2020年10月に新設した DX 推進グループは、まずは営業領域から着手して全社に拡大し、将来的にはビジネスモデルの変革にも取り組みます。
最初に目指すのは、現状の属人的なノウハウ(暗黙知)を、デジタルの力で再現性ある形式知に変えるという事です。その先の夢としては、形ある商品の販売から脱却し、先進的な IOTとイノベーションで、新たなサービスと価値を提供するビジネスモデルへの変革です。
この1年間で、私たちの働き方も大きく変わりました。対面コミュニケーションの減少を余儀なくされる今、社員エンゲージメントの向上には細心の注意を払う所存です。会社に希望と誇りを抱く人財、そして多様な意見を戦わせることで生まれる有機的な化学反応は、組織力の源泉です。人事構造改革、ワークスタイル変革と組織の多様化を、さらに推し進めていきます。
2021年は、さらなる激動の年になるでしょう。濁流を泳ぎきるために、たおやかに姿を変え、しなやかに身をかわし、流れるようにうねりを乗り越えていく「流麗な組織」への脱皮を目指します。今年もどうぞよろしくお願いいたします。