エステーは8月30日、クリアフォレスト事業について他企業との共同開発で業務用市場に本格参入すると発表。2018年3月期決算で示した新中期経営計画の柱の一つ「新分野・新市場」の育成で、目に見える成果を出したといえる。売上目標は20年3月期までに約2億円。
クリアフォレストは、エステーグループの日本かおり研究所が国立研究開発法人の森林研究・整備機構と開発したトドマツから抽出した空気浄化作用に優れる「機能性樹木抽出成分」のこと。これまで自然廃棄されていた樹木の残材を有効利用して、樹木の香りで空気の質を改善する画期的な成分で、①大気汚染低減、②抗酸化機能、③消臭効果、④森林浴の効果などがある。
エステーは2011年から事業化を開始。車内に入り込んだ排ガスなどの汚染物質(二酸化窒素)や気になるニオイを取り除く車用の空気浄化剤などを自社で製品化。一般市場開拓の一方で、業務用市場でも原料販売を始めたものの、未利用枝葉を活用する独自技術で、日本の社会課題である森林保全に貢献できるコンセプトにもかかわらず、ビジネスの拡大はなかなか進まなかった。
そこでエステーは17年秋から「B to B」ビジネスの専任チームを開発グループ内に設置。18年、クリアフォレストを「成分・技術ブランド」と定義し、「機能性樹木抽出成分」を活用する製品の共通ブランド化。そしてクリアフォレストのロゴを入れ、ブランド統一を図る方向に舵を切った。
原料販売では、抽出成分である原料の精油、樹木水だけでなく、新たに針葉粉体を活用する商品化を模索。その研究成果が今回の共同開発による原料供給のスタートに結び付いた。詳細は以下の通り。
①日本カルミック:業務用ディフューザー「エアーフレッシュナー」( 10月1日から発売)
エアーフレッシュナーは、クリアフォレストの樹木精油を活用し、アンモニア、硫化水素、酢酸などの臭いを消臭するとともに、リラックス効果をもたらし、老人介護施設などを中心に展開を図る。
②ダイアン・サービス:エアコン用空気浄化フィルター「AIR QUEST Green」(10月1日から予約販売)
AIR QUEST Greenは、クリアフォレストの針葉粉体をエアコン用フィルターに付加させることで、天然の力による部屋の 空気浄化を可能にする。大気汚染の主要な原因物質である二酸化窒素(NO2)やVOX (ホルムアルデヒド、トルエン)を除去し、アンモニア、硫化水素、酢酸などの臭いを消臭することができる。
ダイアン・サービスの主力商品はエアコンの風除け「エアーウィング」。10種類ほどをラインアップし、累計販売台数は200万台以上。現在、国内だけでなく海外14カ国に展開中である。樹木精油の海外展開には、各国の規制をクリアすることが必須で、エステーは今年中に調査を終える予定。一方、AIR QUEST Greenに使用している針葉粉体は海外展開が可能。つまり、ダイアン・サービスとの連携が深まれば、クリアフォレストは海を渡ることになる。
この他、19年以降の商品化を目指して現在、複数の他企業とのコラボレーション商品を検討中。業務用の一方で、今秋、クリアフォレストのヘルスケア分野への展開を行う新ブランドを立ち上げ、自社新商品を発売する予定だ。
クリアフォレスト事業全体の売上目標および一般市場と業務用市場の売上構成比などは、秋の商品発表時に明かす。同事業の将来像は依然としてベールに包まれているものの、同社の行動規範である「社内の凄いではなく、世の中の凄いを目指そう」を実現する下地が整うのは間違いない。クリアフォレスト事業には、社会にインパクトを与えるポテンシャルがある。