9月13日から15日まで行われた「2018年台湾国際ビューティーショー」で、ひと際目立つブースを展開したのは、スマートビューティミラー「HiMirror」である。

HiMirrorは大きなブースを展開。積極的に情報発信を行っていた

「HiMirror」は、鏡に搭載されたカメラを通じて、毛穴、シミ、赤い斑点、クマ、小ジワ、シワ、 肌色、肌荒れなど、肌状態を総合的に分析。毎日の肌状態を把握できるほか、肌状態の推移を折れ線グラフで表示したり、ビフォー&アフターを比べたり、スキンケアに必要な情報が簡単に手に入る。台湾のほか、日本、欧米などで発売中。当初のBtoCに加え、BtoBへと販路を拡大しているという。

気軽に肌状態のチェックが可能

「スキンチェックのデータベースは1万人以上。それをもとに独自のアルゴリズムをつくり、肌状態を分析している。日本では、蔦屋家電、東急ハンズ、ラオックス、ヨドバシ、ビックカメラなどの店頭で活用されている。肌分析は、クライアントのリクエストに応じてカスタマイズすることも可能だ」(新金宝グループXYZプリンティングジャパンのSherry Liang Director)

「HiMirror」の製造元は、新金宝グループ 。世界的なEMS&ODM企業で、生産拠点として世界に72工場をもつ。既存事業の家電製品分野に加え、新ジャンルとして3Dプリンタ、植物工場などの世界展開に力を入れているが、アジアで成長著しいビューティ産業にも着目。婦人が化粧品選ぶに悩む姿を見たSimon Shen CEOが「HiMirror」を企画したという。今後は日本の住宅事情に適した小型の「HiMirror」を発売する予定。台湾でトライアル販売中で、価格は5000台湾ドルである。YouTubeのハウツー動画を見ながらメイクするなど、新しい機能も搭載。日本導入の際は、さらに磨きをかけた商品になりそうだ。

小型化に挑戦中

一方、「2018年台湾国際ビューティーショー」では、各国の有識者を招いたセミナーを開催。台湾進出を発表したマツモトキヨシが注目を集めた。

マツキヨは、自社の戦略を詳細に解説した。まず日本では、少子高齢化、モバイル普及に伴う消費者の行動変化、ライフスタイルの多様化などにより、好立地に店舗を設置するだけでは売上げが伸びないことを説明。実際、マツキヨの日本店舗のみの売上げは、18年3月期(前期)がマイナス2%、今期(19年4~8月)が1%減だという。

一方、調剤は前期が3%増、今期が7%増。免税店舗は前期が55%増、今期が94%増。EC+O2Oは前期が23%増、今期が25%増。越境ECは前期が107%増、今期が54%増。海外店舗(タイ)は前期が55%増、今期が94%増となっている。「日本だけの商売に比べて、デジタル化、アジアでの商売にシフトしている状況です」(台灣松本清股份有限公司の林保範台灣區總經理)。

この現状を踏まえ、マツキヨの戦略は、三つの方向性がある。一つ目はデジタル化。つまり、店舗だけでなく、複数のチャネルが結び付くオムニチャネル戦略の推進である。二つ目は、アジア需要の取り込み。インバウンド強化に加え、帰国後の需要も取り込むために、タイに続き、台湾に出店予定だが、「さらに進出国を増やしていく方針」と林氏は指摘。さらに中国本土中心の越境ECも強化するという。

「デジタル化を進める中で、オムニチャネルの成功ポイントは三つある。一つ目は、従来のカードよりも、モバイルでお客様とつながる方が深い接点になること。二つ目は、お客様に単純に買い物していただき、ポイントを付与するのではなく、お客様自身に何か動いていただくこと。例えば、SNSなどへの投稿に対して、ポイントを付与することで、より深くつながっていく。三つ目は、本当に難しいことですが、ビッグデータを読み解くこと。保有データをどうディープラーニングしていくか。これがオムニチャネル成功の秘訣だと考えています」(林氏)

マツキヨの顧客接点は、日本国内のみで約5500万人。アナログの従来型カードが2500万人、デジタルが3000万人である。アジアの会員数は307万人。SNSが85万人、TMALLが142万人、REDが80万人。Facebookだけを見ると、ベトナムに1万5000人、台湾に5万人。台湾での出店は準備中だが、Facebookは日系企業の中で2番目に多いという。

日本での顧客分析について「マツキヨでは、お客様を11分類に分けることで、マーケティングのターゲットがぼやけるのを防いでいる」(林氏)と解説。その理由は、従来の年齢別分析が通用しないから。例えば、ある化粧品のID-POSを年代別に見ると、10代が7%、20代と30代がそれぞれ14%、40代と70代以降がそれぞれ12%、50代と60代がそれぞれ11%になる。「もう何がなんだかわからない状況です」(林氏)。

そこでマツキヨは、ライフスタイルの多様化、同年代でも消費行動が異なっていることに着目。商品ごとの性質をスコア化し、顧客アンケートを組み合わせて、顧客を以下のように分類している。マツキヨのお客の8割は、1~5に当てはまるという。

  1. B quest
  2. Cute & Trend
  3. Consrbative M
  4. Trend follow M
  5. New trend M
  6. Household E
  7. Lowprice
  8. Short time M
  9. Senior & Heath
  10. Senior+
  11. Substitute for CVS

例えば、B questは、美の最先端を追い続ける人。20代もいれば、70代、80代にもいる。美の追求に年齢は関係ない。Cute & Trendは、通称「モテかわトレンド」。とにかく異性を意識する人。これも年代は関係ない。

「Mとはママのこと。Consrbative Mは、保守・王道のお母様。Trend follow Mは流行をフォローしたお母様。New trend Mは、とにかく新しいものが好きなお母様で、新商品の目利きに自信があるのが特徴です。このように我々はお客様を深く理解して、アプローチしています」(林氏)

一方、オムニチャネルの強化については、単純計算で数千億円の売上アップが見込めると試算。店舗のみを利用するお客は、オムニチャネルの利用が進むことによって購買金額が上がっていくという。

「従来型カードを持っている人の購買金額を1とした場合、オムニチャネルの会員になってもらうだけで1・1倍になる。アプリ・ウェブの利用開始で1・2倍。オムニチャネルのサービスを使い始めると、1・7倍。マツキヨのECも使い始めると、3・4倍になる。単純なことではないが、オムニチャネルにはポテンシャルがあるということです」(林氏)

また、海外については、日本と同じように、顧客接点と情報を結び付けることが喫緊の課題。国・地域を越えて購買行動を追える仕組みづくりを急ピッチで進めている。例えば、国内免税店舗の売上高を見ると、今期は第2四半期までで16年の約468億円を上回る勢い。マツキヨは購買データとパスポート情報を組み合わせ、アジアの購買行動を分析。平均単価を見ると、台湾は1万5298円、中国は2万2638円、韓国は1万161円、タイは1万2652円になる。また、台湾は全体の12%を占めており、それが台湾進出を考えた理由の一つになったという。

「我々は、難しい日本人のお客様を深く理解しながら、アジアに目を向ける。いわゆるシングルIDでお客様一人一人の動きをつかんでいる日本と同じことをできるようにすることが、マツキヨのマーケティングの目指すところです」

盛況のうちに終えた「2018年台湾国際ビューティーショー」の今後の拡大戦略については、10月7日発売「国際商業11月号」で詳報する。