エステーの2021年3月期上期決算は増収増益で着地した。

売上高は254億7300万円(計画比102.7%、前年比104.2%)、営業利益28億8700万円(同148.1%、同120.0%)、経常利益28億4100万円(同145.7%、同116.3%)、四半期純利益は19億8100万円(同152.4%、同116.3%)となった。

主な増収要因は、新型コロナウイルスによる需要変化で売り上げが伸長したことだ。カテゴリー別に見ると、エアケアが外出の自粛要請などの影響による業務用や車用消臭芳香剤の落ち込みや、海外子会社の売り上げが低迷したものの、「玄関・リビング用 消臭力 Premium Aroma」等の高単価・高付加価値品が堅調だった他、悪臭成分を感じにくくする新技術を用いた新製品「消臭力 DEOX」が貢献。また、内食需要の高まりから「脱臭炭 冷蔵庫用」も大きく伸長し、売上高は115億6000万円(前年同期比1.5%増)。

衣類ケア(防虫剤)は、昨年の消費税増税による駆け込み需要での減少や、今秋の衣替えシーズンは残暑により売り場展開が遅れた影響もあったものの、外出自粛中の巣ごもりで衣替えへの需要が拡大したことにより、「ムシューダカバー」等の伸長の他、新製品の「ムシューダ ダニよけ」も貢献し、売上高は54億6100万円(同0.6%増)。

サーモケア(カイロ)は、前シーズンの返品は減少したものの、残暑の影響から売り場展開が遅れた結果、売上高は7億8800万円(同9.7%減)と唯一の減収。

ハンドケア(手袋)は、新型コロナウイルスに対する除菌・衛生意識や内食需要の高まりから使い捨て手袋、特に極薄タイプが大きく伸長した他、海外での家庭用手袋も伸長し、売上高は31億4600万円(同22.6%増)となった。

湿気ケア(除湿剤)は、降水量が多かったこともあり、タンクタイプやシートタイプが好調に推移、売上高は23億6400万円(同13.6%増)となった。

ホームケア(その他)は、内食需要の高まりから「米唐番」が大きく伸長した他、巣ごもりによる需要から「洗浄力 モコ泡わトイレクリーナー」が好調に推移、業務用ルートで持続性のある除菌剤新製品「Dr.CLEAN⁺(ドクタークリーン)除菌・ウイルス除去スプレー」も発売し、売上高は21億5300万円(同2.6%増)。

増益要因としては販売数量増加による売り上げ増。特に、消臭力プレミアムアロマ、ムシューダカバーなど高粗利商品が伸長したことによる。

また、エアケア、サーモケアの処方変更や内製化による原価低減によって約2億1000万改善、売り上げ原価率も54.3%と改善した。

下期は既存事業の深化、新分野・新市場の探索を方針とし、期初に掲げた五つの基本戦略主力ブランドのさらなる深化、新分野を引き続き取り組む。

特に成長に向けた体制作りで、デジタルトランスホーメーションを積極的に採用する。そのために、20年10月からDX推進グループを新設。部門横断的な取り組みを行っていく。

まず既存事業については、主力ブランドの高付加価値品の強化。エアケア主力品の「消臭力」はエリアマーケティング強化でシェア拡大と、高付加価値品のTVCMや店頭販促で構成比を高める計画だ。また、「ムシューダダニよけ」を隣接カテゴリーに投入したことで、新たな顧客獲得につなげる。

国内の新分野・新市場については、「クリアフォレスト」のオープンイノベーションは継続。原料提供に加え、自社ブランドのラインアップを拡大していく考えだ。

また、トップ主導でB2B新規事業を推進。子会社のエステートレーディングをエステープロに社名変更。プロ向けの高機能な商品、ソリューションを提供する会社を目指す。それに先立ち、プロ品質の業務用商品を展開する事業ブランド「エステーPRO」を新設。持続除菌を可能とする業務用除菌剤、ホテル向け消臭芳香剤エアフォレスト、世界的に2桁成長を続けるフードデリバリー向けの専用の温熱シートという三つを柱に展開する。

サーモケア事業ではヘルスケアラインアップを拡充。サーモケア事業は調達・生産・物流の効率化でコスト競争力も高める。

一方で、未来に向けた投資は計画通り実施。基幹システム投資による業務改革加速、その円滑導入のため無駄な業務を切り捨てて業務改革を加速させる。海外ビジネスも、部分的改善ではなく徹底した構造改革を行うため、不採算事業の「見切り」と持続的成長が見込める「本命事業の創造」を進めるとしている。

ESG取り組みも引き続き強化。環境面では、コロナ禍で遅れていたテラサイクル社のLoopとの取り組みを、21年3月を目処にスタート予定。社会面では、毎年行っている赤毛のアンミュージカルの取り組みの中止に伴い、今年はキャストからの動画配信やオーディション通過者の無料のオンライン配信などをおこなう。

通期見通しは、10月22日に上方修正を発表。売上高が24億円、経常利益3億円、四半期純利益2億5000万円を見込み、当初計画比からそれぞれ3.4%、50.0%、72.4%上方修正した。

エステーの鈴木貴子社長は、「『空気をかえよう』をスローガンとしているエステーですが、新型コロナ禍の今だからこそ、『空気をかえるぞ』と宣言し、今できることに迅速に取り組み、引き続き愛される会社を目指して取り組んでいきたい」と決意を語った。