日本の化粧品ブランドを
中長期視点でサポート

――パートナー企業として日本の化粧品ブランドに興味を持った理由は。

原田 いざ営業を始めてみると、グローバルECに対する化粧品ブランドからの引き合いがとても多かったというのがきっかけです。また、欧米人からするとアジア人の肌の美しさはとても魅力的で、アジアでも特に日本の美容というのはトップレベルだと思っています。私の妻は韓国人ですが、日本に来ると日本でしか売っていないヘアケアやコスメを買っています。日本の化粧品の海外での需要はとても高いし、化粧品はストーリーを含めたブランドの力がとても強い。

――日本の化粧品ブランドは欧米市場での成功事例が少ない。その理由をどう見ていますか。

原田 あくまでニッチだというのが理由の一つだと思います。100人の外国人のうち、マジョリティが日本のことを知っていて、アジアトップレベルの美容の国だというイメージを持っているかというと、決してそうではない。だから、諸外国に店舗を開いて半径10キロ圏内を相手にするビジネスモデルでは成功事例が少なかった。しかし先ほど言ったように高いポテンシャルを持っています。その強みを生かしながら、商圏という考えを取り払うグローバルECで展開することで、日本の化粧品を好むユーザーの絶対数を獲得し、ビジネスを成り立たせるアプローチをしていく。それを実現するのがリングブルです。

――具体的には。

原田 リングブルの社員は18の国と地域それぞれで活躍していて、今もなお急速に世界中で人数を増やしています。そのデモグラフィーも北米、中国、ヨーロッパ、東南アジアなど、世界中に幅広くサポートできる人員がそろっています。パートナー企業として契約すると、まず今のブランドの背景ストーリーなどを聞きながら、多国籍のチームで一緒にブランディングを考えるというフェーズから開始します。今この瞬間に商品を売ろうと思うと、アジア人にしか売れないという状況になりますが、われわれと中長期的なプランを組み立てることで、商品を販売あるいは新たに商品をつくりながら、現地の感覚を持ったチームメンバーや消費者の意見を吸収、ブラッシュアップしていき、5年後には世界中でコアなファンが絶賛しているブランドにする。そこまでの道のりを含めたグローバルECを提供します。難しい原料規制の問題なども、リングブルのリーガルチームがしっかりとチェックリストをつくるなど、サポートは万全です。

――まさに二人三脚でサポートするパートナー企業だと言えますね。

原田 日本は海外から見ると自分たちが考える以上にアドバンテージが大きい。しかしあまりそれをうまく使いきれていない印象です。以前、大手ラグジュアリーブランドの最高戦略責任者(CSO)を岡山に連れて行ったことがあるのですが、彼らは瀬戸内海の風景、田んぼの中にデニムの工場があるということ自体を価値だと判断し、実際にブランドとして昇華しました。日本人自身がすぐにこうした無形資産を使って上手にブランディングできるようになるのは難しくとも、われわれのグローバルECを取り込むことで、まずは“分かっていない”ということを理解し、それを得意とする人材を使うということを知っていっていただければと思っています。マスに向けたスペック重視の商品での価格競争はやめて、日本の持つブランド資産を生かしたブランディングをする。それを愛する強固なコミュニティをつくり上げることで、淘汰されそうなものも保存されていくし、産業自体が“かっこいいもの”になる。企業の開発商品も、採用も、変わってくるでしょう。われわれのグローバルECが中心に据えるこうした中長期的な視点とブランディングこそ、今の日本に一番必要とされているものだと思っています。★

原田真帆人(はらだ・まほと)

1981年7月18日、三重県出身。高校卒業後、米・ミネソタ大学に入学。卒業後は自動車部品商社の扇港産業に入社し、オランダで活躍。同社退職後、日本に帰国しプロスペクトフィールド社を設立、日本デニムの販売「デニミオ」運営に携わる。その後は一度経営を離れ、スイスの名門ビジネススクールIMD(国際経営開発研究所)でMBA(経営学修士)を取得。再び帰国してからはクックパッドにて事業部長として新規事業立ち上げに貢献。習得したプログラミングなどのIT技術を生かし、2016年、グローバルECプラットフォーム「リングブル(LINGBLE)」をスタート。パリ在住。