世界中に商品を届けファンを育てる
グローバルECサービスで
日本企業の成長をサポートしたい
~最大の特徴は多くの企業の世界進出をつなぐ初期・月額費用なしの料金体系~
リングブルCEO 原田真帆人
新たな手法でブランドのグローバリゼーションをかなえる「グローバルEC」が、日本の化粧品ブランドを支える頼もしいエンジンとなりそうだ。リングブルが提供するグローバルECとは、全世界で共通のECサイトを持ち、訪問したユーザーのIPアドレスによって表示するページを変更するプラットフォームだ。世界中の在庫をシンプルかつシームレスに共有しながら、他国の同ブランドサイトや現地リテールと競合することなく商品を販売することができる。
しかもこのサービスは単なる商品の販売システムだけにとどまらない。商品のスペックに加え、それを取り巻く地域、風景、歴史をも組み込んでストーリーをつくり、ブランド化。そのブランド価値に引かれたユーザーをファンとして育成し強固なコミュニティをつくり上げていく過程もサポート。リングブルが手がけるグローバルECサービスは、長く愛され続けるためのブランドづくりそのものを担う。これだけのサポートを提供するにもかかわらず、なんと初期費用や月額費は不要。従来のECサイトの課題を解決する画期的なプラットフォームサービスとして、このリングブルのサービスが注目を集めているのだ。
これからは、より広く多くの企業に同時にグローバルECを提供できるよう、新たなサービスの形にもチャレンジしようとしている。世界中の優秀な人材をまとめ上げながら独自のサービスを追求するリングブル創業者の原田真帆人・最高経営責任者(CEO)に、グローバルECと日本の化粧品ブランドの可能性について話を聞いた。
越境ECとは概念が異なる
シームレスなプラットフォーム
――まずは、リングブルのサービスについて教えてください。
原田 われわれは、パートナー企業である事業会社に「グローバルEC」サービスを提供しています。例えば、あるブランドが、展開している国それぞれで会社をつくり、サイトを制作すると、各国にある同じブランド同士が検索エンジン最適化(SEO)などで競い合うことになり、お互いのマーケティング効率を下げてしまう、という事態に陥ります。グローバルECは、一つのサイトで「.com/US」や「.com/france」のように、訪問するユーザーのIPアドレスに合わせて表示するページが変わるので、ドメイン資産を一つのブランドで共通してためていくことができます。
――そのECサイトで消費者が商品を買うと、どのように対応するのでしょうか。
原田 例えばアメリカに住むユーザーがサイトにアクセスすると、商品ごとにアメリカに発送できる在庫に合わせた購入価格が見えるようになります。ユーザーからは分かりませんが、在庫を保管する倉庫は商品ごとに優先順位が設定されていて、アメリカなら第1がアメリカ国内のウェアハウス、次はカナダの小売店といった順で表示が切り替わっています。ユーザーがどこの国からアクセスしてきたのかによって優先順位が変わり、第一優先の店になければ次、そこにもなければ次、と自動的に切り替わっているため、ユーザー視点ではどこの倉庫から発送されようと、商品を表示価格で購入したら到着を待つだけです。売り上げも、本社がどこにあっても、リングブルは商品を出荷した倉庫に対して直接入金できるので、バッティングが起こらず、越境ECのようにローカルのリテールと競合することもないのが特徴です。
――越境ECとは全く異なる独自のサービスだということですね。
原田 システムもそうですが、考え方の根本が違います。越境ECは、今ある商品を日本市場以外のどこかに売って、どうやって売り上げをつくるか、という発想だと思いますが、われわれが提供するグローバルECは、今だけではない。3年、5年、10年後までずっと売り続ける体制をつくることが目的です。これを私は「世界中で商品を売るための体質と構造をつくる」と表現していますが、それを行うことで、売り上げは自然と後からついてくると考えています。
――世界中でブランドのファンをつくるということですね。
原田 もともと、リングブルが生まれたきっかけは「デニミオ」という日本のデニムを世界中で売るためのECサイトをつくり上げたことです。デニミオで扱うデニム製品は、決して万人受けする商品ではなく、全体の3%ほどに当たるような限られた消費者の心をがっしりとつかむニッチな商品です。しかし、ECを使って世界中で展開すれば、薄く広く広がる層をぎゅっと集め、ブランドのファンを100万人獲得することも可能です。ニッチでも、3%のそれぞれのお客さんが集まって熱心なファンになってもらうような、カスタマーサポートを中心に据えたサイト運営がリングブルの提供するグローバルECの基本で、ただECサイトを制作・納品して終わりという開発企業では決してありません。
――その後はリングブルはどのように発展してきたのでしょうか。
原田 現行のサービスでは、売り上げをつくるという目的でパートナー企業とゴールをそろえるためにも、初期費用も月額費用も不要としています。その代わり、お互いしっかりとした成果を生み出すためにも契約期間は3年間コミットしてもらい、売り上げに対する成果報酬を頂きます。これまで引き受けたプロジェクトは、デニミオが生んだ利益を使いながら1件ずつグローバルECサイトをつくり上げてきました。そんなとき、ご縁があり、フランスのラグジュアリーコングロマリットからグローバルECプロジェクトのコアベンダーに指名いただきました。非常に大きなプロジェクトで、デニミオの利益を利用してつくり上げるという規模ではなかったため、2018年からは資金調達を実行。それがクローズし、そのブランドのカウンターパートと具体的にビジョンを擦り合わせるうちに、われわれのサービス提供の仕組みも少し変えなくてはいけないと思い至ったのです。
――と言いますと。
原田 それまでのように、デニミオでつくっていた仕組みをテンプレート化し、1件ずつその商品やブランドに最適化させていくという手法では、それぞれ全く違うものに仕上がっていって、メンテナンスもそれぞれ必要になってしまいます。なので、それぞれの機能をブロック化して、組み合わせることで一つずつ違う機能を持ったサイトをつくる「モジュール化」をしようと考えました。モジュール化して、それぞれの元となる機能ブロックを更新することで、それを使用しているサイト全ての機能が更新される、というオペレーションシステムの発想に切り替えることで、その大手ブランドのプロジェクトはもちろん、新たなパートナー企業の開拓にも対応できるようにしよう、と。1年ほど開発移行作業をしてモジュール化も完了したので、改めてパートナー企業開拓のため営業を始めたところです。
――営業の手応えはいかがですか。
原田 ほぼ2カ月で、事業規模の大きな企業メインに40社以上の申し込みがありました。これは当初の計画をはるかに超える勢いで、われわれと一緒につくり上げるグローバルECサイトには大きな需要があると確信しました。中には、既に海外EC売上高が1億円以上の規模を持っていて、ECサイトを整えることでさらに何倍かになるのではという伸びしろを感じさせるようなブランドもいくつかあります。一方で、そこまでの売り上げや、大規模なマーケティングを行う資本力もないという企業向けには、テンプレートをはめ込むようなライトプランを考えていて、月額固定費でよりトライしやすいものを来年にはリリースしたい。
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