ライオンは10月21日、webセミナー「オーラルケアの新たな社会課題は『噛む力』の保持へ 50代からの『歯の土台ケア』の重要性 ~“何でも噛める”健康な歯のために~」を開催した。鶴見大学歯学部探索歯学講座の花田信弘教授が「オーラルケアの新たな社会課題は『残存歯+噛む力』の維持へ」をテーマに、宝田歯科医院の宝田恭子院長が「50 代から始まる“歯の土台危機”~実態とケア方法~」をテーマに講演を行った。

ライオンが実施した調査によると、40~70代の6割以上が「歯の健康状態に自信がない」と答えたという。こうした実態を受け、同社はより長く健康な状態で歯を守るために、早期のオーラルケアの啓発の重要性が高まると捉え、今回のwebセミナー開催に至った。今ある歯を1本でも多く、そして健康で何でも噛める状態を守るために、歯だけではなく、歯を支える「歯の土台ケア」が重要であるとの考えのもと実施した。「歯の土台」は、歯ぐきと、その奥にある骨(歯槽骨)などの歯周組織で構成されており、健康な歯の土台は、歯をしっかりと支えているため、食べ物を噛むことができる。歯の土台が弱り、歯を支える力が低下すると、噛む力が低下し、歯が抜けてしまうリスクが高まる。

はじめに講演を行った花田教授は、1989年から厚生労働省と日本歯科医師会が推進する「80歳になっても20本以上自分の歯を保つ(8020運動)」という取り組みを紹介。8020運動の目標は、「80歳20本」達成者の割合を2022年までに50%に引き上げていくことだが、16 年に51.2%とすでに目標を達成している。一方で、厚労省は11 年に「60代で咀嚼に支障がある者の割合を20%まで減少させる」ことを目標に掲げているが、 17 年の調査によると23.8%と目標値に到達していない。

こうした数値を踏まえ、花田教授は「歯を残すことに加え、残した歯の『噛む力』を保持していくことが、今着目すべきオーラルケアの課題」と指摘し、「噛む力を支えているのは『歯の土台』であり、歯の土台を弱らせる主な要因は歯周病です」と強調した。また、歯の土台の一部である歯槽骨は、肌などと同様に新陳代謝が繰り返されており、歯周病により炎症が広がると、歯槽骨の新陳代謝のバランスが崩れ、骨を壊す細胞が活性化し、歯槽骨の減少につながるという。

鶴見大学歯学部探索歯学講座・花田信弘教授

続いて、宝田院長による講演では、まず、歯がぐらついたり、抜け落ちるリスクのある土台の状態のことを「歯の土台危機」と称し、宝田院長とライオンによる歯の土台危機に関する調査結果を示した。調査は40~70代に対して行い、その結果50代の35%が歯の土台危機層であることが分かったという。40代では15%ほどで、「(歯の土台危機は)50代から急増する」(宝田院長)ことが数値から見てとれる。

宝田院長は、「セルフケアとプロケアの両立がないと、いずれ歯の土台の危機を迎え、歯の喪失という結果に至る」と前置きし、歯の土台を守るセルフケアとして、毎日の食事で実践できる①穀類すりつぶし食事法と、②宝田式歯磨き法、③宝田式歯ぐきマッサージ法の二つのオーラルケア、計三つを紹介した。

①は、姿勢を正し、硬めに炊いた白米や玄米 1 口分を口に入れ、ゆっくり30回程度すりつぶすようにして噛んで食べる 。②は、歯と歯ぐきの境目に毛先を斜めに当て、毛先を意識して軽い力で小刻みに動かし、12本ずつ磨く。③は、歯ぐきと唇の折り返し位置と歯と歯の間の歯肉を、中心に向かって指でなぞるようにしてマッサージする 。中でも①については、「しっかり噛むことで、歯の土台を構成する歯槽骨の新陳代謝の活性化が期待できる」(宝田院長)と説明した。

宝田歯科医院・宝田恭子院長