令和の陣「ミルボン vs. ナプラ」の行方

では、「ナプラ vs. ミルボン」の戦いは、どうなるのか。この対決構図を見ると、かつての「ウエラvs. ミルボン」の関係を思わずにはいられない。今や大きな差が開いてしまって、ウエラはミルボンの敵ですらなくなった感もあるが、90年代後半から2000年代前半にかけて、この関係が火花を散らしていたのだ。

この当時も製品のウエラに対して、サロンのトータルサポートのミルボンの印象が強く、フィールドの活動内容で、ミルボンに軍配が上がった印象がある。「ミルボン vs. ナプラ」も多少、性格は異なるが、やはり、製品のナプラに対して、サロンのトータルサポートのミルボンという構図に変わりはない。

商品力だけで、売る上げが上がるというのは、メーカー冥利に尽きる話で、究極、ナプラはそこを目指しているように見える。しかしながら、メーカーとしての王道的な在り方というか、姿勢は、旧態依然としている。

一方、ミルボンは真面目に誠実にヘアサロンの抱える経営課題と向き合い、そのソリューションを通して、商品を配荷していくことを信条としている。商品自体が学級委員的だろうが、面白みがなかろうが、美容師・美容室の支持を受けやすく、離反が少ない。特に業界全体が、慢性的な人手不足、客数減少で、淘汰の時期に入り、新しい美容ビジネスが模索されている今、こうしたソリューションビジネスのニーズは上がる一方であろう。

最後にもう一つ、付け加えると、この両社の違いは、代理店政策に特に顕著に見られる。

ナプラの場合、自社のマーケティング戦略頼みで、あまり代理店を当てにしていない。中小代理店が林立していた30年ほど前の話であれば、これで問題なかったが、最近の大手ディーラーは、それなりの提案力、販売力をつけてきているので、ここをどうエンゲージしていくかが、メーカーの売り上げを左右する大きなポイントになっている。

ナプラの営業部隊は、まだ代理店と協業するフォーメーションになっていない。対するミルボンは、昔から代理店との協業を重視した活動になっているので、サロン側から見た時、安定感、信頼感が段違いにある。

令和という新時代に起きた「ミルボン vs. ナプラ」。プロダクトオリエンティッドを重視してきたナプラの新しい打ち手。業界トップの地位を築いたミルボンの妙手。どちらに軍配があがるのかが見ものである。

美容アナリスト 桐谷玲