ミルボンの成長を支えた二つの政策

では、なぜ、ミルボンは業界トップの地位を築いているのか。しかも、その競争力は強く、ナプラが抜くには、これまで以上の勢いが必要だろう。

よく指摘されることであるが、ミルボンの競争力は、「FP戦略」と「TAC製品開発システム」という二つの政策に支えられている。かいつまんで説明すると、FPとはフィールド・パーソンの略で、モノを売る営業ではなく、どうしたら、美容室の売上が伸びるか、そのための情報提供を行う活動と位置付けられている。そのため、ミルボンの提案は、サロン経営に役立つという評判が上がり、ミルボンシェアが伸びていったという経緯がある。

一方のTACであるが、こちらはターゲット・オーソリティ・カスタマーの略で、顧客代表開発システムと呼ばれている。要は、エンドユーザーに支持されている美容師の代表と製品を共同開発することである。より美容師目線に合った商品開発ができるということで、こちらもミルボンの大きな特徴になっている。

さて、この二つのストロングポイントをよくよく突き詰めてみると、美容室・美容師に目が向いた活動、商品開発であるということがわかる。エンドユーザーの声も、美容師を介在して、意見が取り入れられているという点がポイントだ。つまりミルボンの製品は、これを使うと美容室の売り上げが上がる、美容師が使いやすい、という視点が最重要視されているのであって、必ずしもエンドユーザーに向けたラグジュアリー感などにウエイトが置かれているわけではない。よって、真面目で優等生的という評価になるのだが、商品としての色気に欠けるのは否めない。

その点、ナプラの商品、特に『N.(エヌ・ドット)』などは、色気があるというか、手に取った時のワクワク感がある。それが理由でもないのだろうが、Amazonや楽天などで売られている横流れ品の時価を見ると、ナプラの製品は、サロンの上代価格の2~3倍の値がついている。