花王のパーソナルヘルスケア研究所は、睡眠と密接な関係がある体温に着目し、眠りに入りやすくなるメカニズムを明らかにする研究を行なった結果、眼の周りを適度な温度で温めると手や足の皮膚温が上がり、体の熱が外に逃げる「放熱」が促進されることを確認した。この生理的変化は人が眠りに入るときの体の状況と類似しており、入眠にポジティブな影響を及ぼす可能性が考えられる。

同社は2017年に睡眠の悩みを持つ人を対象とした研究で、就寝時に眼の周りを適度に温めると「寝つきがよくなる」など、睡眠の質が改善するという結果を報告している。その作用機序として、リラクゼーション効果による心理的な影響と体温変化の生理的な影響の両方が考えられる。そこで今回、これらを検証するために、眼を安全に適度な温度に温めることができるシートを用いて試験を行なった。

その結果、眼の周りを適度に温めることで対象者は自覚的な心地よさや眠気を得ること、コントロールと比べて、手足の皮膚温の上昇が大きかったこと、コントロールと比べて、体幹に対する手足の皮膚温の差が大きくなり、体の熱を外へ逃がす放熱が促進されたことを確認。以上の結果と過去の研究から、眼の周りを適度に温めることにより、リラクゼーション効果としての心理的な影響と生理的な影響の両方が睡眠に影響することが示唆された。なお同研究結果は日本睡眠学会第44回定期学術集会シンポジウム20(2019年6月27・28日、名古屋)で発表。また研究結果の一部は、英国Nature Publishing Groupの電子ジャーナルScientific Reportsに掲載されている。