“ベルマーレ愛”は1ミリも変わらないと表明

2018年YBCルヴァンカップを制した湘南ベルマーレが1月11日に活動を開始した。新体制発表会が開催され、新人、移籍組などニューフェイスプレーヤーのお披露目などが行われた。

湘南ベルマーレの新体制発表会の模様

その席上、18年4月から湘南ベルマーレに資本参加しているRIZAPグループの瀬戸健社長が挨拶に立ち、湘南ベルマーレのクラブ内にこの19年1月から本格稼働をスタートさせているRIZAP lab(ライザップラボ)についてスピーチを行った。

RIZAPグループの瀬戸健社長

「昨年11月に第2四半期決算を発表し、大丈夫かなと心配をおかけしています。昨年から仲間になった湘南ベルマーレはどうなるか、と。しかし、1ミリも変わることなく、湘南ベルマーレとともに未来を築き上げていく。RIZAP labはアスリートに食事指導を含めて最高のトレーニング環境を提供していく。テクノロジーを活用して選手のデータを定量化して、選手一人ひとりの個別のトレーニングに徹底的に寄り添って選手のパフォーマンスアップをしていく」

RIZAP labでは、選手の強化内容に合わせたトレーニング・食事のメニューの提供が行われる。怪我を抱えた選手は、怪我の部分をケアしながらトレーニングを行うといったメニューが促進される。

labには、30分で2時間のトレーニング効果が得られる「低酸素ルーム」が用意されている。「低酸素ルーム」は、高地トレーニングの効果を狙ってつくられたもの。トレーニングエリアのスペースは従来の10倍、トレーニングマシーンは2・5倍の台数が設置されている。

低酸素ルーム

瀬戸社長は、RIZAP labの本格稼働をこう語っている。

「湘南ベルマーレの未来を自力でつくる。夢の持てるチームにしていく。選手一人ひとりに特化したトレーニング、食事で選手のパフォーマンスに本気で向き合う。選手のパフォーマンスを上げるために最大限のサポートをしていく。個々の力を強くすることでチーム力・組織力を高める。チームRIZAPとしてトレーナー、管理栄養士3名が常駐する」

最新のトレーニングマシーンを導入

湘南ベルマーレの経営トップもRIZAP labの本格稼働について、その効用は「チームにとって大きい」としている。

湘南ベルマーレの真壁潔会長は「labの稼働で、トレーニング環境としてはJリーグの下位のほうだったところから上位水準に位置することになった」としている。水谷尚人社長は「スペースは10倍と大きくなり、マシーンも拡充されて以前とは大きく変わった。Jリーグの他のチームの選手やJリーグに入ってくる新人選手などで、labの設備やソフトの充実からベルマーレに入りたいということになればいい」と語った。真壁会長、水谷社長とも「この改善で怪我などを抱えている選手の治療が進み、ゲームで使える選手が増えるとすれば相手のチームに対して優位に立てる。labの効用は凄く大きい」としている。

選手の練習風景

このRIZAP labは、当面は湘南ベルマーレ専用ということで、“実験”が進められる。ただ、先行きはアスリート専用の食事を含めたトレーニングビジネスとして新たに展開される可能性を秘めている。これについては、瀬戸社長は語っていないが、新ビジネスへの展開につながっていくとみられる。

ボディメイク事業がバーゲニングパワー(交渉力)を生み出す

ところでRIZAPグループの本業といえるボディメイク・トレーニングのRIZAP事業だが、現状は133店舗(国内126・海外7=18年12月)。RIZAP関連事業は、19年3月期第2四半期では137億円(前年同期比71%増)と高い成長力を維持している。全体の損益は急悪化しているが、セグメント別損益では、RIZAP関連事業は収益の大半を稼いでいる。

19年3月期通期のRIZAP関連事業の売り上げ予想数字は未公表だが、この動向が今後にとって案外大きな意味を持つことになる。

RIZAPグループの損益の足を大きく引っ張っているのはワンダーコーポレーション、ジャパンゲートウェイ、サンケイリビング、ぱど、タツミプラニングなど16~18年に新たに傘下入りした企業群である。

サンケイリビング、ぱどはともにフリーペーパー企業。この2社の比較では、ぱどはフリーペーパーではトップの実績があり、従業員の平均年齢が若いというメリットがある。一方でサンケイリビングは、従業員の平均年齢が高いという問題を抱えており企業体質面ではネックを持っている。

これらの企業は、当然ながら構造改革の対象であり、撤収売却に進む可能性が高いとみられる。

本業であるRIZAP関連事業の好調は全体の損益悪化のなかで救いであり、経営資源を本業の成長に集中する戦略を進めている。

不振部門の企業を撤収売却するにしても、本業が高成長を維持して収益を生み出していれば、バーゲニングパワー(交渉力)が生み出される。それだけにRIZAP関連事業の成長推移は、不振企業の撤収売却問題に微妙に影響を与えることになるとみておく必要がある。

ジャーナリスト 小倉正男