新たな役員構成は大きな意味を持つ

“経営危機”に直面しているRIZAPグループだが、懸案だったコーポレートガバナンス改革に着手した。経営の執行と監督、チェック&バランスを基軸とした経営改革に迅速に一歩を踏み出した格好である。

瀬戸健社長、松本晃構造改革担当の二人が代表権を持っていたが、松本構造改革担当が自ら経営責任を示す形で代表権を返上する。ただし、松本構造改革担当は取締役として残るとしている。

代表権を持つのは、瀬戸社長一人となる。瀬戸社長は報酬返上などを実施しているが、「2人代表制」から代表権が一人に絞られ、責任がより明確化される。株主など外から見ると、曖昧さがなくなり、経営責任はより重くなるのは間違いない。

新しい経営体制は、瀬戸社長にとって厳しい試練だ

RIZAPの役員は12人で構成されていた。社内役員9人、社外監査等委員3人なのだが、社内役員は瀬戸社長、松本取締役構造改革担当の2人に大幅削減になる。

ほかの社内役員7人は、M&A担当の2人を含めて、辞任という格好になる。新たな役員構成は、瀬戸社長、松本取締役構造改革担当、それに社外監査等委員3人となる。これは大きな意味を持つことになる。

辞任する7人の役員は経営責任を示すことになった。だが、それよりも役員として役員会に残れば、M&Aを支持・推進してきたサイドだけに子会社売却・撤収など経営改革の“抵抗勢力”になることもあり得る。表現は厳しくなるが、瀬戸社長を取り巻いたり、経営改革に手心を加えたり、甘さが出ることが懸念される。これらの動きは、あくまで19年6月の定時株主総会の新役員選定までの暫定措置としている。

当面の新たな役員会の顔ぶれは、瀬戸社長、松本構造改革担当、社外監査等委員3人の合計5人になる。瀬戸社長、松本取締役が経営の「執行責任」を負い、社外監査等委員3人が「監督責任」を持つということになる。執行と監督の責任が分担されるが、社外監査等委員3人の「質」、すなわち経営からの独立性=インデペンデントが問われることになる。

日本の上場企業では、経営トップの知り合いとか、友人筋を社外取締役に用いていることが大半で、独立性がないケースが一般である。いわば、形や飾りだけのガバナンスが行われている。情実を断ち切った独立性を持った経営監督がなければ、ガバナンスはないということになる。企業経営に対するチェック&バランスがないからだ。ただし、今回は暫定措置とはいえ、松本構造改革担当の主導で行われているだけにガバナンスは保たれるとみておきたい。

冒頭に、新たな役員構成は大きな意味を持つと指摘したのは、そのことでガバナンス=チェック&バランスが機能すると見られるからだ。経営の執行と監督、責任が分担され、それぞれの責任を果たす改革が実行される可能性が高い。

瀬戸社長が経営判断を間違うことができない体制

松本構造改革担当が代表権を返上したことで、形としては瀬戸社長が代表権を一人で持つ体制になった。瀬戸社長の権限が大きくなり、RIZAPの改革は「先送り」など曖昧化されるという懸念が一部のメディアから報道された。

だが、それはむしろ逆で、改革は促進されるとみてよいに違いない。瀬戸社長にとっては、周りの「取り巻き与党」の役員が誰一人いない体制で、経営改革を怠れば、1対4で経営議案を採決される可能性がある。代表権を一人で持つ社長とはいえ、監督にさらされる。下手な経営をすれば、社長や代表権を失いかねないリスクが内在している。いわば、瀬戸社長が経営判断を間違うことができない体制が敷かれているわけである。

松本構造改革担当は、かねてから「瀬戸さんにほれた。いいものを持っている。立派な経営者になれる」と発言している。松本構造改革担当としては大人の愛情という立場から、瀬戸社長をむしろ厳しいところに突き落として、自らの力で経営者として再生しろといっている感がある。

松本構造改革担当は、ワンダーコーポレーション、ジャパンゲートウェイ、サンケイリビングと社名を挙げて、撤収・合併などRIZAP再生プランを提示している。おそらく、相当にドラスティックな撤収・合併が行われる。

クライシスマネジメントでは、RIZAP本体が生き残ることが最大の至上命題だ。87社というRIZAPグループ各社だが、赤字を生み出している会社は躊躇を避けて撤収を行うのが鉄則になる。その鉄則を執行して、RIZAPを再生させるのは瀬戸社長の仕事=使命になる。RIZAPは、先送りを避けて素早いスピード感で企業再生に踏み出そうとしている。日本では、企業再生が経営理論通りに行われた事例が稀少だ。

RIZAPは、松本構造改革担当の主導でまさに経営理論に沿っており、瀬戸社長はこの厳しい試練を成長の糧にして企業再生に向かってほしいところである。

ジャーナリスト・小倉正男