第3四半期単期では黒字化
RIZAPグループの19年3月期第3四半期決算(IFRS)は、売上げ1724億円(前年同期比73.9%増)、営業損益57億9900万円の赤字(前年同期80億8200万円の黒字)となった。
業績が急悪化をみせた3カ月前の第2四半期決算の営業損益は88億2900万円の赤字だった。したがって、第3四半期の営業赤字額は、第2四半期までとの対比でいうと、30億3000万円の赤字減となっている。
つまり、第3四半期単期だけをとれば、営業損益で黒字を計上したことになる。
2月14日夜、東京都内でRIZAPグループの決算発表・説明会が行われた。瀬戸健社長、松本晃取締役構造改革担当の二人が壇上に上がった。それは昨年11月14日の第2四半期決算とまったく同様だった。
瀬戸社長が決算の説明などメインスピーカーとなり、質疑には松本構造改革担当の二人が対応した。
前回の第2四半期決算は、瀬戸社長の落ち込みが激しく、松本構造改革担当との発言などの事前の調整も乏しく、不謹慎にいえば、どこに転ぶのかというスリリングなセッションだった。
しかし、今回の第3四半期決算は、前回よりも打ち合わせされ、大枠では瀬戸社長がリードするセッションになった感がある。ただ、松本構造改革担当の発言は、相変わらず微妙な陰影があり、独特の重みがあった。
事業会社、赤字と黒字の内訳
第3四半期単期の黒字転換は、やや意外な急回復だったようにみえる。乏しい経験からいうと、大幅な営業損益赤字増も懸念されていたのだが、道半ばではあるがグループ内の「危機バネ」が働いたといえそうな営業損益の動きである。
第3四半期の黒字額の半分は、基幹ビジネスであるボディメイク事業が稼いだとものとしている。第3四半期のボディメイク事業単体売上げは326億円(前年同期比38%増)となり、営業利益は30%増益となっている。ボディメイク事業の店舗数は、第3四半期で185店(18年3月期末149店=36店増)と順調に増加をみせている。
営業損益の損失部門からいうと、非上場子会社ではジャパンゲートウェイ25億円、タツミプラニング7億円、サンケイリビング7億円の赤字となっている。上場子会社ではワンダーコーポレーション30億円、ぱど6億円の赤字が続いている。
これらはいずれも第3四半期までの累計金額である。なおジャパンゲートウェイは19年1月に売却が発表され、第4四半期に7億7000万円の売却損が営業損益に計上される。
営業損益の黒字部門はボディメイクが筆頭だが、MRKホールディングス、ジーンズメイト、イデアインターナショナル、HAPiNSなどの上場企業が損益黒字に貢献している。
MRKホールディングスは体型補正婦人下着に強みがあり、新規出店を積極化させ、老朽化していた店舗の移転・改装などのテコ入れによる構造改革を実行している。こうした先行投資が奏功したのに加え、遅れていた新主力婦人下着商品「カーヴィシャス」の安定供給体制が整ったことが寄与している。売上げが増加し、それに利益率が改善され、19年3月期通期では10年ぶりの営業損益黒字化が実現される見込みだ。
ジーンズメイトはインバウンド部門の売上げが寄与。4期ぶりの営業益黒字化を果たすことになる。
イデアインターナショナルは住関連ライフスタイル商品で実績があり、「BRUNO」ブランドで一人暮らしの女性向け調理家電マーケットで先行している。中国の「独身の日」には、BRUNOホットプレートが人気となって話題となった。営業損益は黒字を継続しているが、さらに右肩上がりで増益を果たす勢いにある。
HAPiNSはインテリア雑貨・生活雑貨の専門店で、出店戦略の奏功があり、前18年3月期に営業損益で黒字転換し、19年3月期は黒字幅を増加させる見込みだ。
運命の第4四半期、来期黒字転換に向け「損切り」に踏み込む
第4四半期には、おそらくというか、いやむしろ確実に、ワンダーコーポレーション、ぱど、タツミプラニング、サンケイリビングなどの売却撤収が行われることになる。この売却損が営業損益の損失額に上乗せされる。これは待ったなし、避けてはならない経営戦略行動で、この構造改革なくしてRIZAPグループの生き残りはあり得ない。
瀬戸社長は、第4四半期について、こう話している。
「売却する会社を具体的にいうことはできない。(ワンダーコーポレーションなどの具体的な指摘について)個別のところは控えさせていただきたい。第4四半期にどのぐらい(売却による)損失が出るのかは答えられない。ゆっくり時間をかけて、1年かけて売却をやれば金額(赤字)は抑えられるが、いとわず踏み込んでいこう、と。損切りは来期(20年3月期)に持ち越すべきではない。来期の黒字転換、持続的な黒字に向けて、今期(19年3月期)に踏み込んでやる。赤字が大きい会社は優先順位をつけて、すみやかに改善しなければならない。マイナス、赤字には短期で向き合って、しっかりと来期の黒字転換を果たしていきたい」
「損切り」という株式用語が出たが、売却撤収については、これらの瀬戸社長の発言にほぼいい表されている。ただ、松本構造改革担当はRIZAPグループの構造改革後のドメインを含めて、こう話している。
「曖昧な表現だが、構造改革のスピードはまあまあかな、と。グループ会社はなにせ沢山あり・・・。(売却撤収について)具体的な名前(社名)はいえない。構造改革については撤退などのロードマップを決めて、(最終的にはRIZAPグループを)どんな会社にするのかドメインを決めましょう。グループAは、ボディメイクなど成長する企業グループ。グループBは,キャッシュをいまはそれほど多くはないにしても生んでいる、キャッシュを生み出せる企業。これらは残していく。グル-プCは問題のある会社、瀬戸さんのフィロソフィーとちょっと違うのではないかという企業。撤退というのもひとつ、売却というのもひとつ(と判断している)」
松本発言「ケジメは個人個人で決めて下さい」の真意は
さらに松本構造改革担当は、すこし唐突な感じで「ケジメ」について触れており、注目される。
「ケジメ」というターム(言葉)は、第2四半期決算説明会、第3四半期決算説明会を通じて、初めて使われたものだ。松本構造改革担当は、「ケジメ」についてこう話をしている。
「構造改革のロードマップは何から始めたかというと、ケジメから始めた。みんな悪かったわけではないが、間違ってしまった。ケジメはしっかりつけましょう。ケジメは個人個人で決めて下さい。自分の責任をつけろ、と。何人かは個人の意思でケジメをつけた。瀬戸さんははじめにケジメをつけられた・・・」
これは、ケジメあるいは経営責任、それらの総括ということになる。なぜRIZAPグループは間違ってしまったのか。誰が、いつ、どういう判断で、RIZAPグループを生死の淵に彷徨させたのか。そのケジメ、責任、そして総括はなされたのだろうか。それがなされなければ間違いは根絶されないで、RIZAPグループに禍根が残ることになりかねない。
だが、松本構造改革担当は、ケジメはすでに終わったと判断しているのか、終わっていないとしているのか、クセ球過ぎてやや判断を惑わせられる。その上、会見の最後に瀬戸社長、RIZAPグループとの関係性について、微妙な言い回しで語っている。
「(私は)昨年6月にRIZAPに来た。瀬戸さんに惚れてRIZAPに来た。(自分の)いろんな経験を活かしていきたい。個人(の感慨)としては、(役目・役割は)半分ぐらい終わった・・・。もう少し、瀬戸さんの一緒に働いてみたいな、と。(瀬戸さんと)関係が切れることはないと思っている」
ジャーナリスト 小倉正男