花王の技術力を活かした製品の開発、そして流通の見直し、新ブランド・オリベの市場投入と、サロン業界では眠れる獅子であった花王がいよいよ目を覚まそうとしている。競合他社も戦々恐々といったところであるが、市場競争力をさらに高めるには課題も残されている。

その一つが独自の教育システムの確立だ。パブリックのヘアケアの世界ではあまりピンとこないかも知れないが、プロフェッショナルケアの業界では、製品の取り扱いサロンの美容師に対する教育カリキュラムをメーカーが開発し、業務用商品の普及に努める。メーカーがサロンに提供する教育機会は、大きく三つあって、一つ目が自社スタジオなどで行う集合講習、二つ目が海外イベントや海外研修のツアー、そして三つ目が臨店講習だ。

この中でも、とりわけ重要になるのが臨店講習。サロンをローラーで回って1軒1軒落としていくやり方だ。ベタな活動で、面倒で手間がかかるので、これを嫌がるメーカーも多い。

だが、特にカラー剤の場合、価格以外の要素だと、製品の配荷軒数は、臨店講習に比例するというのが業界の常識。シェアの高いメーカーほど、これに力を入れている。パブリックから来たメーカーが、プロフェッショナル業界のビジネスで成功できない最大の原因は、臨店講習の意義と効果に対する過小評価に尽きるといってよい。

今回、新しく発足した花王サロンジャパンによるゴールドウェルのリブランディングでは、代理店を再構築して販売力の強化も期待されるが、臨店講習などを請け負う人員配置、教育活動などへの投資、美容師のステップアップをサポートするシステムの整備では、いまだ他社の後塵を拝しているといわざるを得ない。

この最後のピースをどう埋めるか。捲土重来「花王」のプロフェッショナルケア戦略の成否を握る。(了)

(美容アナリスト・桐谷玲)