花王は8月1日、花王サロンジャパン株式会社を設立し、本格的な活動を開始する発表。日本のプロフェッショナルケア業界の関係者に衝撃が走った。
花王のプロフェッショナルケアの事業は、現在、16年前に始めたゴールドウェルの展開が主で、他に目立った活動は見られない。世界のプロフェッショナルケアの業界を見ると、ゴールドウェルはシュワルツコフに次ぐ7番目のハイブランドだが、日本においては影が薄く、国内売上げは推計で6億円程度と見られている。この規模では、中小メーカーのレベルで、存在感が発揮できない。
花王の保有するプロフェッショナルケアのブランドの影が薄い理由は大きく二つある。
まず第1に、これまで花王本体はゴールドウェルジャパンにアンタッチャブルを決め込んでいた。ゴールドウェルジャパンは、後述するように、花王以外の人間が代表を務めるなど、組織は独立していた状況で、花王としての「顔」が見られなかった。せっかく買収したにもかかわらず統合が進まず、実質的にはドイツ本国のゴールドウェルの指揮下にあったといわれている。今回の花王サロンジャパンの設立によって、花王の完全指揮下に入り、人員もほぼ一新された模様だ。
二つ目の理由は、花王内部にプロフェッショナルケアでの成功体験がないこと。これがゴールドウェルの経営に深く踏み込まなかった要因かもしれない。プロフェッショナルケアの外資系メーカーが日本のマーケットにアダプテーションするステップには大まかに2段階の過程があると考えられる。
フェイズ1は日本のメーカーとのジョイントベンチャーで、シェアを拡大していく時期。この段階では、ビジネスパートナーの流通チャネルやリソースを活用してブランドの認知を広げていく。ロレアルやウエラが日本に入ってきた時はこのパターンで成功している。
もともとゴールドウェルは、タカラベルモントが販売していた。ウエラ取り扱いの契約解除に伴い、ウエラの代替ブランドとして、1989年に花王が買収した。花王は過去何度か、プロフェッショナル業界にチャレンジしてきたが、いずれも伸び悩んだ。その最大の理由は、直販ビジネスを試みたことにある。
そこで日本におけるゴールドウェルの販売に関しては、いわゆる代理店制度を採用。花王には直販のイメージが強く、代理店の覚えが悪かったため、ゴールドウェルが日本に入ってきたとき、光美容化学という東北のディーラーの社長をゴールドウェルジャパンの社長に据えて、代理店流通のパイプをつくろうとした。しかし、結果的にはこの戦略は上手くいかず、あまり影響力のない中小の代理店が集まってしまい、思うように配荷が進まなかったという経緯がある。
外資系メーカーのマーケットアダプテーションのフェイズ2は、ジョイントベンチャーを解消して、ブランドが独立し、ディストリビューター的存在からメーカー的存在へと脱皮していくという段階である。前述のように、ゴールドウェルは流通政策で思うような成果が出ず、フェイズ2へのシフトが上手くいかなかったが、今回の花王サロンジャパンの創設によって、リブランディングに乗り出した格好である。(美容アナリスト・桐谷玲)
(第2回に続く・8月27日に公開予定)