アタック、ビオレ、メリーズに続く大型ブランドに育成する

2018年11月、花王が満を持して発表した「Fine Fiber Technology(ファインファイバーテクノロジー)」の事業展開が明らかになった。この技術は、肌の上に極薄の膜をつくる花王の独自技術で、事業化の第一弾は、化粧品領域。花王のプレステージブランド「est」、カネボウ化粧品の「SENSAI」から、全く新しい概念のナイトケアを提案する。19年11月1日、花王がリッツ・カールトン東京で開いた記者会見で澤田道隆社長は、次のように熱弁を振るった。

最新技術は、花王のプレステージブランド「est」、カネボウ化粧品の「SENSAI」に導入される

「まずはコスメティクスからだが、最終的には医療、治療の領域を目指していきたい。ファインファイバーテクノロジーは、我々にとって、非常に可能性が高いテクノロジーで、これまでの延長線上ではできなかった用途、応用を実現します。まずは美の世界で女性の笑顔をつくる。医療、治療の分野で悩む方を我々の技術でサポートする。社会の大きなお役立ちにつながるソーシャルイノベーションにつなげることで、将来的な事業規模は1000億円を目指す。このぐらいの事業規模があれば、大きなプレゼンスを持つブランドになるのではないか」

花王のブランドで年間売上高が1000億円を超えるのは、アタック、ビオレ、メリーズのみ。4つ目の巨大ブランドへの成長が期待されるファインファイバーテクノロジーは、機器を用いて直径1ミクロン以下の細かい繊維を直接肌の上に吹き付け、積層型の極薄の膜をつくる技術のことである。細い繊維が幾重にも折り重なることから、軽く、柔らかい極めて薄い膜になる。次の動画を見れば、ファインファイバーテクノロジーが理解しやすい。

 

この極薄の膜には、いくつかの特徴がある。例えば、肌と膜の段差が極めて少ないこと。普通のテープを肌に貼ると、段差ができるのに対し、ファインファイバーテクノロジーでは、それが生じない。肌と膜の段差が少ないことから、剥がれにくく、肌に自然になじみ、肌との境界も見えない。また、三次元形状なので、関節などの折り曲がる部位に吹き付けても、肌の動きに柔軟に追従し、肌表面をなめらかに整える性質がある。

さらに、フィルムとは異なり、ファインファイバーテクノロジーは繊維の隙間から水蒸気を通すので通気性に優れている。そして、一本の糸が空間を持って積層されるので、毛管力(物体内の狭い隙間が液体を吸い込む力)が働きやすい。製剤が広がるだけでなく、長くとどまるのに、全くベタつきがない。この毛管力の働きを示すのが、次の動画だ。

 

これらのユニークな特徴を持つ極薄膜は、同時に使う製剤との組み合わせで、さまざまな分野への応用が可能だ。花王は、ファインファイバーテクノロジーの可能性を幅広く紹介するWebサイトを開設。最新の研究成果を公開することで、外部企業との連携を拡大。オープンイノベーションの活用で、ファインファイバーテクノロジーの用途を広げていくという。