プレステージのスキンケア未導入の北米を狙う
ただし、店舗展開はブランドで異なる。「est」は、日本国内は銀座の直営店、主要百貨店6店舗から始まり、来年の春には約100店舗まで拡大。海外は20年1月の中国越境ECでの販売を皮切りに、韓国の免税店、花王香港、花王シンガポール、花王台湾、花王中国などのアジア圏で販売拠点を広げていく計画だ。
一方、「SENSAI」は、12月4日から日本の主要百貨店3店舗で先行発売し、20年2月にイギリスのハロッズ百貨店、フランスのボンマルシェ百貨店に導入。その後は順次、欧州各国に展開する。さらに越境ECは20年春にスタートし、免税店での販売も視野に入れている。村上執行役員は次のように話す。
「今回の技術は、国境を越える力を持つ、本当のイノベーションだと思っています。『est』は日本とアジア、『SENSAI』は欧州。花王グループがプレステージのスキンケアが展開できていない北米エリアも、この技術をうまく使えば、進出が可能になるのではないか。いまスタディを続けています」
化粧品領域におけるファインファイバーテクノロジーの活用は、スキンケアだけではない。メイクアップ、ボディケア、アートでも商品の投入を計画している。村上執行役員は、「化粧品領域の売上目標は、早期に100億円です。ディフューザーに入れる製剤を変えれば、みなさんがワクワクし、驚く用途を提案できることを伝えていきたい」と説明。そして、澤田社長は、次のように話す。
「100億円は、できるだけ早くやりたいですね。今回の技術がディフューザーと一緒に早く世界に広がれば、相当なスピードでいける。これは国内だけでやる技術ではありません。グローバルに展開できるか。展開の仕方も、日本、中国、アジア、欧州、米州で全く違うと思います。それぞれに合わせたエビデンスを取っていかないといけませんが、それができれば、事業は加速すると思います。
ファインファイバーテクノロジーについて、色々なエビデンスを取っています。スキンケアと並行して、例えば、シミがうまく隠せないなどの悩みに応えるメイクアップ。ボディケアは、日本より欧州、米州のエビデンスを取っているところです。アートの世界、プロメイクの世界でもアーティストとエビデンスを取得している。商品として提案できる方向になったとき、順次、商品展開をオープンにします。
また、医療、治療は大学の先生方と取り組んでいますが、医療機器申請が必要になるかもしれない。今からやっても3年から5年のタームになると思う。認可されたら一気にお役立ちできるように準備します」
日本発の革新的な技術は、世界を席巻するのか。花王・カネボウグループの手腕が試される。