肌をベールに包み、眠るナイトケアを提案

このオープンイノベーションの第一弾として、美容家電に多くの知見を持つパナソニックアプライアンス社と協力して開発したのが、ファインファイバーテクノロジーの極薄膜を自宅で簡単に作れる高性能小型ディフューザーである。このディフューザーがつくる極薄膜とエフェクター(専用美容液)を組み合わせた新しいナイトケアを「est」と「SENSAI」から提案する。花王の村上由泰執行役員(化粧品事業分野担当)は、記者会見で次のように語った。

「ファインファイバーテクノロジーから生み出される新しい異次元の肌を『フューチャースキン』と呼ぶことにしました。未来の肌という意味だけでなく、お客様の生活、あるいは、お客様の新しい未来を切り開くこともお手伝いしていきたい。この思いを込めて、フューチャースキンという言葉を使っています。ファインファイバーテクノロジーの応用は、無限だと思っています。いくつかの研究がかなり進んでおり、それぞれ事業化を準備しています。その中で、すでに高い肌への効果が確認できたことから、化粧品のスキンケア領域から事業をスタートします」

右から花王の澤田道隆社長、村上由泰執行役員

「est」と「SENSAI」が提案するナイトケアは、エフェクター(専用美容液)の他に、ディフューザーとそれにセットして使う化粧液で行う。まずエフェクターを顔全体になじませる。その次に、ディフューザーに化粧液をセットし、頬にゆっくりと吹き付ける。反対側の頬に続いて、額(ひたい)にも吹き付ける。手で吹き付けたベールをなじませると、透明になる。あとは、ベールをつけたまま、眠るだけ。翌朝、ベールを剥がすと、美容効果を実感できる。最初にエフェクターを使うのは、ディフューザーで吹き付けた膜を安定的にとどめる働きがあるためで、高い肌への効果を実現する大事な役割を担っている。

ナイトケアの肌実感は、肌表面の水分環境を適切な状態に整えることで、肌が持っている美しさを引き出す「湿潤環境ケア」によって得られる。これのヒントは、湿潤療法から得たという。ケガをした時に、一昔前は患部を乾かして治していたが、湿った状態で治すと、速くキレイに治癒するというもの。この療法について、花王の研究部門が深掘りし、「湿潤環境ケア」を編み出したという。村上執行役員は、次のように説明する。

「ディフューザーとエフェクターを組み合わせることで、適切な水分状態を朝まで維持できます。(生活者は)普段の化粧水、乳液のお手入れに加えて、フェイスマスクを使用すると、もっと効果が出ると実感しています。ただ、フェイスマスクをつけて、朝まで眠ることは不可能だと思います。我々の技術は、非常に柔らかく、つけた感じがしませんから、違和感なく、朝まで過ごせます。一晩中スキンケアしている状態になるため、肌の状態が全く変わる。これが最大の特徴です」

ファインファイバーテクノロジーを「est」と「SENSAI」に導入したのは、それぞれのブランドコンセプトと親和性が高いからだ。皮膚科学にこだわってきた「est」は、19年秋から「驚け、無限の自分に」をキーメッセージを掲げるとともに、新しいスキンケアラインを発売し、ブランドをリフレッシュさせていく。肌が持っている力を引き出したいという「est」の考えと、ファインファイバーテクノロジーの特徴、フューチャースキンの考えは親和性が高い。

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一方、「SENSAI」は、カネボウ化粧品が30年以上前から欧州で展開してきたプレステージスキンケアブランドで、コンセプトは「THE SENSE AND SCIENCE OF JAPAN」である。村上執行役員は「日本の感性、皮膚科学を融合させていく唯一無二のラグジュアリーブランドにしていきたい。日本的な佇まいのブランドに、最先端の技術を注ぎ込む。非常に面白い展開ができると思う」と意気込む。

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発売日、商品名、価格は、両ブランド共通だ。12月4日発売で、商品名は「バイオミメシスヴェール」という。美容液は1万2000円、高性能小型機器は5万円、化粧液は8000円である。12月4日の発売に合わせて、東京・銀座にある直営店「SOFINA Beauty Power Station」を「BEAUTY BASE by Kao」にリニューアルし、同社の多様なイノベーションを体験できる場にする。「(ファインファイバーテクノロジーの商品は)とにかく体験していただくことが大事」(村上執行役員)であることから、12月4日から1年間は、ファインファイバーテクノロジーの訴求に全力を注ぐという。