「非常に厳しい決算になった」。花王の澤田道隆社長は、2020年12月期中間期決算をこう振り返った。中期経営計画K20の最終年度であり、花王石鹸発売130年の節目の年ということもあり、「相当な気合を入れていた」(澤田社長)中での新型コロナ禍の直撃で苦戦を余儀なくされた。
売上高は前年同期比7.5%減の6671億円、営業利益は13.8%減の744億8400万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は11.7%減の506億円と減収大幅減益となった。
特に厳しかったのは化粧品事業。国内においてはインバウンドの急速な減少に加え、マスク着用常態化によるメイクの低迷、外出規制や小売りの臨時休業のトリプルパンチとなったこともあり、事業全体では売り上げが21.5%減の1099億円、営業利益は前年同期の147億円から今期は48億円の赤字に転落した。
ここ数年、花王グループの化粧品事業は構造改革に着手してきたが、そのさなかに起きた新型コロナ禍。これまでメイクからスキンケアにつなげるビジネスモデルだったこともあり、競合に比べてメイク比率が高いことから、メイク市場が厳しい時は大きな影響を受ける。今回の新型コロナによるメイクの低迷はこれを直撃した。
また、事業売り上げに占める固定費の改善に向けた投資の整理、ブランド集約の推進、ECの積極展開といった取り組みも途上だった。澤田社長は、「これらの影響により、競合よりも大きな影響を受けた」と説明した。
そのほかの事業別売り上げは、スキンケア・ヘアケア事業が10.4%減の1511億円、ヒューマンヘルスケア事業が5.3%減の1183億円、ケミカル事業が7.3%減の1354億円といずれも減収となった。
一方でプラスだったのはファブリック&ホームケア事業で、事業売上高は5.8%増の1717億円、営業利益は31.6%増の333億円。ハンドソープや手指消毒剤が貢献した。なお、ハンドソープの市場規模は昨年の260億円から、今年は500億円に、手指消毒剤も35億円から500億円にそれぞれ拡大することが見込まれており、花王では生産能力を拡大。シェアも伸長しているという。
通期業績は、当初は第4四半期より復調してくると見込んでいたが、想定以上に回復スピードが緩やかであることを考慮し、期初予想を下方修正。売上高は4.8%減の1兆4300億円、営業利益は10.3%減の1900億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は9.6%減の1340億円に見直した。
下期は化粧品事業こそ引き続き厳しい状況が続くものの、マイナス幅は縮小する見込み。加えてスキンケア・ヘアケア事業の下期売り上げは前年同期比プラス55億円、ヒューマンヘアケア事業が同プラス28億円、ファブリック&ホームケア事業は同プラス108億円となる見通し。これにより、減収幅は縮まると想定している。一方で利益面では固定費の増加などを見込み減益を想定する。
澤田社長は「いろいろな状況はあるが、経営としては言訳無用と考えている。どのような事態になってもあきらめずに戦い抜く」と改めて決意を示した。