Onedot株式会社 CEO
鳥巣 知得(とす・ちとく)


 

本稿が表題としている「SNSマーケティング」では、様々なデータが取得できる分、目標に設定し、継続モニタすべき指標は多岐に渡ります。ソーシャルメディアが非常に発達した中国では状況はより複雑であり、迷われている方が多いようです。

複雑さの一つは、ただでさえ多様なソーシャルメディア上の指標について、その真贋を見極めることが要求される点にあります。ストレートに言えば、フォロワー数などを「買う」ことで表面上の数字だけを取り繕うことが容易にできてしまうという環境もあり、単純な指標を機械的に追求してしまうと、中身のない数字遊びになってしまう危険性を孕みます。

とある日系企業の例として聞いた話ですが、微博(Weibo)でフォロワー数のみを成果指標として本社が予算を持ち、現地法人に運営を委ねたところ、数百万人のフォロワーを持つまでにアカウントは(見かけ上では)成長したが、実態はほとんどが「買われた」フォロワーで、投稿に対するユーザーからのリアクションも殆ど見られないものとなってしまっている、ということでした。

また、毎月の目標もフォロワー数のみで設定されているため、現地の担当者は成果報告のグラフが自然な伸びになるよう、フォロワーを「買う」数を調整するということに心血を注いでいるとか……。

とは言え、「買う」ことが出来てしまうので全ての指標が何も信じられないというのも行き過ぎで、当地にも誠実な施策を積み上げ、確かなマーケティング効果を達成している企業は多く存在しています。また、右記の例は論外にせよ、フォロワー数だけを愚直に追い求めることで、本来ターゲットではない層もひたすら積み上げるということが起きないようにしなければなりません。

そのための手段として、一つには、マネジメントすべき指標を立体的に組み合わせることが重要です。具体的には、フォロワー数のみならず、フォロワーからの具体的なアクション(いいね!やコメント、リンクのクリック数など)の数やフォロワー数に対する比率を目標に組み込むことで、指標を「買う」ことは非常に難しくなりますし、フォロワーが真に自社製品やブランドに興味関心のある層なのかどうかということを確認できます。

また、ユーザー属性やコメント内容などの定性的な情報も分析し、フォロワーやコメントの「質」にも気を払うことが出来れば、本質的な目標達成により一歩近づくことができます。

特にコメント内容は、外国語だとつい敬遠しがちですが、漢字で大体の雰囲気を把握することができますし、文章量などを眺めるだけでも有益です。たまに見る「買われた」コメント欄では「いいね!」や「ナイス!」といった単純なコメントが延々と続くといった、非常に不自然な光景が繰り広げられています。

中国のSNSマーケティングが複雑になるもう一つの要因は、プラットフォームが多く存在することです。日本であれば、facebookにinstagram、それにtwitterを足しておけばかなりの範囲をカバーできますが、中国では微博(Weibo)や微信(WeChat)に加え、最近では头条(Toutiao)のようなニュースサイトや小红书(Red)のような領域特化SNS、動画であればPC寄りの优酷(Youku)や爱奇艺(iQiyi)からスマホ特化の美拍(Meipai)や抖音(TikTok)……と、様々なプラットフォームがあり、それぞれを組み合わせ、ウォッチしておく必要があります。

一方で、そうは言っても、多岐に渡る指標を複数のプラットフォームで設計し、モニタし続けるというのは手間もかかります。無論それを自社で精緻に把握することが出来ればベストですが、それが難しいという場合に、中国の場合、第三者のランキングサイトを参考にするという手段もあります。

ランキングサイトとは、中国でソーシャルメディアの活用が発達するに応じて、ソーシャルメディア上の各アカウントを評価し、ランク付けするサービスです。新榜(newrank)や克劳锐(topklout)といったサイトが比較的大手ですが、卡思(Caas data)のような新たなランキングも最近出てきました。

新榜( newrank)のトップページ

これらのランキングは多くの場合、複数プラットフォーム横断でデータを収集し、様々な指標を重み付けして、業種やコンテンツのカテゴリーごとに分類したランキングを出しています。対象としているプラットフォームや指標の重み付けロジック、またカテゴリーの分類方法などがサイトごとに異なるため、ランキングサイト同士でも微妙に顔ぶれが異なりますが、概ねの傾向は共通していることが多いと思います。

2018年3月に行われた克劳锐 (topklout) の授賞式。授賞理由は、 「育児/親子領域 で最も影響力のあるメディア」で、左から 4人目が筆者

このようなサイト上で自社のアカウントに対する指標や評価を見てみることで、ある程度の全体像を簡易に摑むことができます。また、他社のアカウント(SNS上のメディアやKOLなど)と提携したプロモーションを企画する際も、提携先のアカウント選定をする際に参考となるでしょう。

こういったランキングサイトでもいわゆる「買われた」数値の影響を受けることもあるようですが、継続的に多様な指標を維持することは難しいため、複数のサイトで上位にいるアカウントは比較的正常なものが多いようです。また、このようなサイトはランキングの延長で定期的に表彰イベントのようなものを開催しているため、その中での顔ぶれをチェックし、有力プレイヤーを知っておくことも有効だと思われます。

今回はやや細部にも立ち入った内容になりましたが、データの真贋についての知識は外せないのが中国の特徴です。無防備に流されるでもなく、完全に敬遠してしまうでもなく、状況をよく摑んで上手く活用することを目指したいものです。★

Onedot株式会社
中国と日本で育児動画メディア「Babily」を提供。育児に役立つ情報をスマートフォンで見やすい1分動画で制作・配信し、中国では育児動画メディアとして最大手