一般社団法人油脂工業会館は9月14日、「第1回油脂産業優秀論文受賞報告会」および「令和7年度研究会活動報告会」を開催。技術発表とビジネス・事業報告を分離し、オンライン配信も組み込んで実施した。

冒頭、あいさつに立った濱逸夫理事長は、「本会は昭和44年開始の論文表彰と平成13年開始の研究会事業を根幹とし、業界の課題に対して自ら問題意識を持って解決策を提案する場」と説明。企業の垣根を越えた若手・中堅による議論の成果を単なる提案で終わらせず、具現化して油脂産業全体の活性化と大きな成長へ繋げる重要性を強調した。

今回の油脂産業論文では、①持続可能な社会と油脂産業の未来②油脂産業と他産業との連携イノベーション--の二つのテーマで募集。優秀賞には、①では「シロアリがつなぐアフリカ油脂自給と循環型社会 ~ミクロな生物が動かすマクロな社会経済循環~」(花王 野中伸洋氏、入江裕氏)、②では「油脂産業と情報通信技術の連携で実現するデング熱・マラリア低減プラットフォーム」(花王 難波綾氏)がそれぞれ選出。最優秀賞は①のテーマで「劣化地を価値に変えるポンガミア植栽と次世代の精製・収益化システムによる環境親和型油脂産業の提案」(ミヨシ油脂 真鍋宣隆氏)が選ばれた。

その後行われた研究会活動報告では、「DXによる油脂産業のサプライチェーン変革」について、ミヨシ油脂の橋本勇樹氏をリーダーに1年間研究し、報告書にまとめた。報告会では研究会の参画者が地政学リスクや労働力不足、2024年問題に伴い、油脂産業が抱える「情報の断絶」「標準化不足」「属人化」という根深い構造課題を指摘した。

特に需給調整を行うSCM(サプライチェーンマネジメント)と技術成立条件を担うECM(エンジニアリングチェーンマネジメント)の分断を埋めるため、単一企業の枠を超えた「協調型DX」の必要性を示唆。各社独自の競争領域と、業界全体で共有すべきデータ定義、共通フォーマット、接続ルールなどの非競争・協調領域を明確に分離し、まずは可視化・言語化から着手し、最小限の情報共有と厳格なガバナンスのもとでBCP情報の可視化や需給調整の標準化を進める重要性を示した。

さらに業界団体を単なるルール策定者ではなく実務検証を行う「実験場の設計者・運営者」と位置付け、2040年に向けた産業全体のレジリエンス強化を訴えた。