ロート製薬は、ロートグループ経営総合ビジョン「Connect for Well-being & Longevity」の実現に向け、食と健康を将来にわたって支えるためオーラル領域の研究を進めている。今回、新潟大学大学院医歯保健学研究科硬組織形態学分野依田浩子准教授、耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野大野佑樹先生との共同研究により、ロートグループの独自素材であるグロビン蛋白分解物、ミルク由来加水分解ぺプチド(以下、ミルクペプチド)、加水分解大豆ペプチド(以下、大豆ペプチド)に、歯のエナメル質形成・成熟および唾液腺活性化に関与する可能性を見いだした。

近年、食生活や生活環境の変化により、子どもの口腔機能の未発達や発達不足が社会課題として注目されている。噛む、飲み込む、発音する、唾液によって口腔内環境を整えるといった機能は、将来の食生活や健康維持に深く関わる重要な要素だ。子どものオーラル機能に関する社会課題に着目し、将来の食と健康を守るための研究テーマとして、歯の発育や唾液腺機能に関わる基礎研究を進めた。

歯においてエナメル質は歯の最表層を構成する硬組織であり、咀嚼機能を支えるとともに、外部刺激や物理的ダメージから歯を保護し、歯の審美性の維持にも寄与している。何らかの原因でエナメル質が正常に形成されないと、歯の強度や耐久性が低下するため、むし歯になりやすくなったり、歯が欠けたり摩耗しやすくなったりするほか、歯の変色といった外観上の問題が生じることが知られている。このようなエナメル質が正常に形成されない要因としては様々なものがあり、特に永久歯においては、乳歯のむし歯や外傷、栄養障害などが要因と考えられている。

また、唾液は、口腔内の乾燥を防ぐだけでなく、エナメル質や象牙質の再石灰化、菌叢バランスの維持、口腔内環境の保護に重要な役割を担っている。特に子どもの口腔機能発達においては、唾液の分泌機能が健やかな口腔環境の維持に寄与すると考えられる。
同研究は、歯の形成におけるエナメル質形成・成熟段階に着目及び、唾液腺の発達に関わる基礎的メカニズムを明らかにすることを目的として、新潟大学と共同研究した。

結果1:グロビン蛋白分解物、ミルクペプチド、大豆ペプチドがエナメル質形成・成熟に関わる細胞機能へ与える影響を確認

同研究では、歯の発育におけるAMP-activated protein kinase(以下、AMPK)の発現様式と役割に着目した。AMPKは細胞内のエネルギー代謝を調節する因子であり、歯の形態形成や成熟に関与する可能性がある。そこでエナメル上皮幹細胞の培養系にグロビン蛋白分解物、ミルクペプチド、大豆ペプチドをそれぞれ添加し、エナメル質形成・成熟に関わる細胞増殖、分化、関連遺伝子発現等への影響を検討した。

その結果、AMPK発現亢進作用のあるグロビン蛋白分解物、ミルクペプチド、大豆ペプチドを添加した条件において、エナメル質形成に関わるエナメル上皮幹細胞の細胞増殖促進作用が確認された。ミルクペプチド、大豆ペプチドに関してもエナメル芽細胞の分化・成熟の促進に関わる遺伝子発現(amelogenin〈エナメル芽細胞分化マーカー〉、KLK4〈エナメル芽細胞成熟マーカー〉)の増加傾向がみられた。

結果2:ミルクペプチド、大豆ペプチドによる唾液腺活性化に関わる細胞増殖促進作用を確認

唾液腺(顎下腺)由来の上皮細胞を用いミルクペプチド、大豆ペプチドの添加による唾液腺活性化に関連する因子の発現の指標として細胞増殖に関わる変化を評価した。その結果、唾液腺(顎下腺)由来の細胞に対して、ミルクペプチド、大豆ペプチドに、有意な細胞増殖促進作用が確認された。

同研究成果により、ロートグループ独自素材であるグロビン蛋白分解物、ミルクペプチド、大豆ペプチドが歯の形成に、ミルクペプチド、大豆ペプチドが唾液腺活性化に関わる可能性が示された。特に学童期は、乳歯から永久歯への移行や口腔機能の発達において重要な時期である。この時期に、歯の形成や唾液分泌を支える口腔環境を整えることは、将来の健康基盤づくりにもつながる。さらに、成長期にとどまらず、成人期の口腔機能維持や加齢に伴う口腔機能低下の予防、高齢期のオーラルフレイルへの対策など、幅広いライフステージへの展開も期待される。

同研究成果の一部は、3月24~26日、東京都にて開催の第131回日本解剖学会総会・全国学術集会にて口頭発表を行った。

【用語説明】

・グロビン蛋白分解物:ロートグループであるエムジーファーマが保有する素材。ヘモグロビンなどに含まれるグロビン蛋白を酵素などで分解して得られるペプチド素材。食品・健康領域における機能性素材として研究されている。

・ミルク由来加水分解ペプチド(ミルクぺプチド):ロート製薬が保有する素材。2009年に素材開発された原料。数多くのペプチド(アミノ酸が2~50個程度つながったもの)が含まれており、ペプチドは生体を調節する作用を有することから、健康維持に対して非常に多くのポテンシャルがあると考えている。

・加水分解大豆ペプチド(大豆ペプチド):「大豆」を酵素加水分解した加水分解ダイズペプチドで、同社が独自に開発した機能性成分。

・AMPK:AMP-activated protein kinaseの略。細胞内のエネルギー状態を感知し、代謝を調節する酵素。エネルギー代謝や細胞機能の維持に関わる重要な因子として知られている。

・エナメル質:歯の表面を覆う硬い組織。体内で最も硬い組織とされ、歯を外部刺激や摩耗から守る役割を担う。

・オーラルフレイル:加齢などに伴い、噛む、飲み込む、話すといった口腔機能が低下した状態。全身のフレイルや健康状態にも関わることが知られている。