ライオンは弘前大学、青森県黒石市との共同研究で、子どもの生活習慣と歯並び悪化(叢生)の関係を7年間にわたる追跡調査で検証した。その結果、「睡眠時の口呼吸」と「食事中にあまり噛まない習慣」が、2年後の歯並び悪化につながる可能性を初めて経年的に確認した。歯並びの予防には科学的根拠が十分ではなかった中、生活習慣の改善による予防の可能性を示した成果として注目される。

ライオンはオーラルヘルスケアの領域を従来の「口腔衛生」から「口腔機能」へ広げ、「生活者特性や既存習慣に合わせたソリューション提案を実行する。その中で、子どもの口腔機能は将来の健康を左右する重要な要素であり、小児期に適切な口腔機能を育むことを重点テーマの一つとして研究を進めてきた。

ライオン研究技術センター本部長生産技術センター担当の内藤厚志執行役員(写真:右)のほか、弘前大学や青森県黒石市教育委員会の担当者など

その一環として弘前大学、黒石市と共同で取り組んだのが、子どもの生活習慣と歯並びの関係を調べる大規模な疫学研究である。歯並びや噛み合わせは咀嚼機能だけでなく、むし歯や歯周病のリスクにも影響するとされる一方、生活習慣との関係については十分な科学的エビデンスが存在していなかった。研究では、黒石市内の九つの小学校(現在は統廃合により4校)に在籍する児童を対象に2019~25年度まで継続調査を実施。参加者数は年度ごとに異なるが190~480人程度。保護者への生活習慣アンケートや学校歯科健診データ、歯並びの写真を組み合わせ、同じ児童を2年間追跡することで生活習慣と歯列変化との関連を解析した。全国でも珍しい経年的な追跡研究となった。

研究では、乳歯から永久歯への生え替わり時期に当たる小学3、4年生時点の生活習慣が、その後の歯並びにどのような影響を及ぼすかを検証した。将来的な歯列不正を生活習慣の改善によって予防できるかという視点から、予防手段の確立につながる知見の獲得を目指した。

 その結果、二つの生活習慣が歯並び悪化との関連を示した。一つは睡眠時の口呼吸だ。小学3、4年生時点で保護者が「睡眠時に口が開いている、または時々開いている」と回答した児童は、2年後に叢生を発症した割合が、そうでない児童より約3倍になっていた。睡眠中に口を閉じ、鼻呼吸を維持することが歯並び形成に重要な役割を果たす可能性が示された。

子どもの噛む力を育成する「噛もっと!」

もう一つは食事中の咀嚼習慣である。「食事の際にあまり噛んでいない」と回答した児童では、2年後に叢生を発症した割合が約2.1倍に。十分に噛むことが顎の発達や歯列形成を支え、将来的な歯並び悪化の予防につながる可能性が明らかになった。これらの結果から、小児期に「鼻呼吸」と「よく噛むこと」を習慣化することが、将来的な歯列不正の予防に役立つ可能性が示唆された。ライオンでは4~12歳を対象とした噛む習慣作りをサポートする「噛もっと!」グミとガムをすでに販売しており、これら製品の認知度も高めていく。

 ライオンは今回の研究成果を踏まえ、子どもの口腔機能を育むサービスや啓発活動にも反映していく考えだ。同社はオーラルヘルスケアを全身の健康につながる入り口と位置付け、口腔衛生に加え、咀嚼や嚥下、発話などの口腔機能まで含めた新たな価値提供を進めている。今回の共同研究も、ライオン、弘前大学、黒石市に加え、教育委員会や学校、地域の関係者が連携する産官学民一体の取り組みとして実施され、地域全体で子どもの健康づくりを支えるモデルケースとなった。

今回得られた知見は、日本にとどまらず世界のオーラルヘルスケアにも応用できる可能性を秘める。ライオン研究技術センター本部長生産技術センター担当の内藤厚志執行役員は「今後、海外でも同様の共同研究の展開を視野に入れる」とし、各国・地域の生活習慣に応じた科学的エビデンスを蓄積。オーラルヘルスケアが目指すユニークかつ収益性の高いビジネスを推進し、人々の「食べる・話す・笑う」を支える取り組みをグローバルに広げていく考えだ。