スキンケア市場において「菌」や「マイクロバイオーム」という概念が存在感を高めている。従来の化粧品は、汚れを落とし、肌に不足する成分を補うという外部からのアプローチが主流であった。しかし近年、皮膚常在菌を含む生体環境そのものに着目し、「整える」という発想への転換が進んでいる。本稿では、この潮流の背景と市場動向、具体的な企業事例を整理しつつ、現状の課題と今後の展望について考察する。

皮膚マイクロバイオームとは何者なのか

皮膚マイクロバイオームとは、皮膚表面および毛包、皮脂腺などに生息する細菌、真菌、ウイルスといった微生物群と、それらの遺伝情報の総体を指す概念である。代表的な常在菌としては、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)やアクネ菌(Cutibacterium acnes)などが知られており、これらは単なる〝付着物〟ではなく、皮膚の恒常性維持に重要な役割を果たしている。

具体的には、常在菌は外来病原菌の侵入を防ぐバリアとして機能するほか、皮脂や汗を代謝することで弱酸性環境を維持し、皮膚の免疫応答にも関与することが報告されている。一方で、このバランスが崩れる状態は「ディスバイオシス」と呼ばれ、アトピー性皮膚炎やニキビ、敏感肌といった皮膚トラブルとの関連が指摘されている。

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