本稿は、世界的に次の成長領域と言われる化粧品の「個対応(パーソナライズ)」の可能性について論じている。前編では日本市場の現在地と普及を阻む四つの構造的な要因に触れた。今回の中編では実際に市場に展開されている個対応の現状と将来展望について論じる。個対応には現状大きく二つのカテゴリーが存在すると言える。一つ目は、スマートフォンのカメラ画像やAIを活用し非対面でセルフ診断を行うもの(例:スマホアプリによる肌分析)。二つ目は、店舗のカウンター等で専門機器やスタッフのカウンセリングを通じて対面で診断するものである。

日本企業が挑戦するセルフ診断と体験型診断

スマートフォン等を用いたセルフ肌診断は、主にカメラで撮影した顔画像をAIで解析する技術に支えられている。ユーザーが自宅で素顔のセルフィーを撮るだけで、肌の状態を複数の指標でスコア化することが可能である。セルフ肌診断の領域の目まぐるしい発展の裏には昨今の急速なAI技術進化、ハードウェアの進化が存在している。AIによる解析手法が確立される以前は、伝統的な画像処理フィルタによって手作業で肌の特徴を抽出していた[https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10252983/]。例えばシワ検出にはヘシアン行列やガボールフィルタによる線状特徴抽出が広く用いられ、毛穴検出にはハイパスフィルタやクラスタリングモルフォロジー処理などで小さな暗部を抽出する、またシミについては、周囲よりも明度の低い領域を局所的に二値化・抽出するといった古典的方法が有効として考えられていた。従来の方法ではある特定の特徴量のみで肌を評価することが限界であり、実際の肌で起きている複雑な変化を「まとめて」評価すること(つまりより実感や印象に近いありのままの評価)に限界があった。

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