日本の化粧品は、高品質の処方と安全性、最先端の基礎研究で世界の信頼を得てきた。一方で、グローバル市場におけるブランドの存在感では、欧米・韓国勢に押される局面も目立つ。本稿では、日本の研究の現在地を静かに整理し、薬機法や広告規制の枠組みが情報の伝わり方に及ぼす影響を検討する。そのうえで、エビデンスに基づく訴求が広がった場合に研究がどのように価値化され得るか、そして、制度を性急に是非論へと導かず、今後の検討に値する方向性を穏やかに示したい。研究と市場、制度の3点を結ぶ視点を提供することで本稿が未来の方向性検討の一助となることを願う。

日本の化粧品基礎研究は世界トップクラスか

化粧品の基礎研究の実力を国際的に測るうえで、IFSCC(The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists:国際化粧品技術者会連盟)は、最も象徴的な場の一つである。世界中の研究者が一堂に会するConferenceでは、世界各国の企業や研究機関が最新の研究成果を持ち寄り、優れた論文には賞が与えられる。

日本はこのIFSCCにおいて、長年きわめて高い存在感を維持している。日本化粧品技術者会(SCCJ)が2024年に公表した案内文では、「最新のIFSCCランキングでは日本が1位であり、日本の化粧品研究・技術は世界一であることが示されている」と明記されている。国別の受賞件数や学会への貢献度を総合した評価で日本がトップであるという事実は、日本の研究力が世界の最前線に位置していることを象徴していると言えるだろう。

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