2024年10月14日から18日にかけて、第34回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)大会がブラジルのイグアスで開催された。IFSCCは、1959年に設立された世界各国の化粧品技術者会から成る国際組織である。化粧品技術の向上と国際協力を目的とし、現在81の国・地域を代表する51の団体が加盟し、約1万6000人の会員を擁する。この大会には34カ国から1300人以上が参加し、口頭発表83件、ポスター発表604件が行われた。日本からは口頭発表10件、ポスター発表54件があり、活発な議論が展開された。
その中で資生堂が「シミ特有の細胞老化現象の解明」に関する研究で最優秀賞(口頭発表基礎部門)を受賞した。資生堂みらい開発研究所の井上大悟博士らの研究チームは、老人性色素斑形成の要因として、新しい老化現象である「メラノエイジング」を提唱した。この研究は、過剰なメラニンの蓄積が表皮細胞に与える影響を多角的に分析し、老人性色素斑の形成、維持、拡大のメカニズムを詳細に解明したものである。本稿では化粧品研究の最先端である本IFSCC受賞研究にフォーカスし、その概要について論じることとする。

老人性色素斑が発生し根治できない理由

顔や手の甲に見られる「シミ」は、多くの人にとって加齢の象徴的な変化の一つである。このシミは、医学的には「老人性色素斑(Solar Lentigo)」と呼ばれ、紫外線(UV)による慢性的な刺激による光老化の結果として現れる症状である。さらに加齢に伴って発生することから、加齢によるターンオーバー低下が原因として考えられていた老人性色素斑は、紫外線をはじめとする外的要因と年齢による内的要因が重なり合って生じる肌の変化の一つである。

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