不老長寿や健康寿命の延伸は、古来より人類の永遠の願いであり、時の権力者たちをはじめ多くの人々を魅了してきた。科学技術が急速に進化した現代でさえ、いまだSF映画の世界のおとぎ話に過ぎなかった。ところが近年、その夢が実現の可能性を帯びている。その技術がSenolytics(セノリティクス)である。「老化した細胞」だけを選択的に除去することで、老化に伴うさまざまな疾患や症状の改善、さらには老化の進行そのものを遅延させる可能性を持つ画期的な技術である。本稿では、セノリティクスの概論を中心に皮膚老化を交えながら技術の可能性と課題について考察する。
そもそも老化細胞が身体に与える影響とは
細胞の老化は1956年に発見された現象である(Exp.Cell.Res. 1965 Mar:37:614-36.)。老化細胞(Senescent Cell)とは①細胞がDNA損傷や酸化ストレス、炎症などの有害な刺激を受ける、②または加齢に伴い細胞の分裂能力が限界に達することにより、分裂が停止した細胞のことである。つまり老化細胞は加齢によって増えるだけではなく、紫外線ダメージや、慢性炎症などによっても起きると考えられている。
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