化粧品の「個対応(パーソナライズ)」は、世界的には「次の成長領域」として語られることが多く、いつの間にか業界の共通語になっている[https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/]。日本の化粧品産業はカウンセリング販売を軸に成長してきたが、その日本で個対応が“当たり前の購買体験”として根付いたかと問えば、まだ疑問が残る。魅力的な体験が散発的に生まれてはいるが、普及の手前で足踏みしている印象も否めない。背景には、技術・制度やサプライの問題だけでなく、生活者の納得をどう設計するか、というより根源的な問いが横たわる。この難題にどう向き合い、解決すべきか。今回は前編、中編、後編の3回に分けて、個対応技術の最前線と日本のサービスを紹介しながら、日本市場で個対応が伸びきらない構造を研究・テクノロジーの視点から整理し、次の勝ち筋を論じてみたい。

パーソナライズドコスメの日本市場における成長と限界

パーソナライズドコスメ(個対応コスメ)とは、一人一人の肌状態・嗜好・悩みに合わせて、処方(配合設計)やテクスチャー、色調、香りなどを個別最適化して提案・提供する化粧品・サービス群を指す。実装形態は、対面カウンセリングを核にした「診断→提案→製造(または選定)」から、オンライン問診・画像解析・AIを用いるD2C型まで幅広い。産業側の整理としても、パーソナライゼーションは「顧客と対話し、分析し、最適な提案へ落とし込む」一連のプロセスとして捉えられている。この潮流が成長領域として語られる背景には、生活者側の“肌悩みの細分化”と“自分に合う根拠”への関心上昇がある。市場推計の例では、Grand View Researchが「パーソナライズド・スキンケア製品」市場について、2022年に約262億ドル、23〜30年CAGR 8.0%と推計している。国内でも市場は立ち上がり期から拡大期へ移行してきたとみられ、富士経済の調査として報道ベースで参照される数値では、国内パーソナライズ化粧品市場は19年に前年比94%増の130億円規模に拡大したとされる[https://release.nikkei.co.jp/attach_file/0538895_02.pdf]。

この情報へのアクセスはメンバーに限定されています。ログインしてください。メンバー登録は下記リンクをクリックしてください。

ログイン