日本メナード化粧品は、表皮に存在する「トリセルラータイトジャンクション」と呼ばれる構造が、表皮の「角質層」と「顆粒層」におけるバリア形成に重要な役割を果たしていることを明らかにした。
角質層では細胞間脂質や天然保湿因子、角質細胞が複合的にバリアを形成し、顆粒層では隣接する細胞同士を密着させる「タイトジャンクション」がその役割を担っている。しかし、三つの細胞が接する部位では隙間が生じる。トリセルラータイトジャンクションは、顆粒層の三つの細胞が接する部位に形成される特殊な構造で、細胞間の隙間をなくし、肌内部からの水分蒸散を防いでいる。
今回の研究では、トリセルラータイトジャンクションの減少が、顆粒層と角質層のバリア機能の低下につながること、トリセルラータイトジャンクションの形成に必要な遺伝子の発現量が多い人ほどバリア機能が高いこと、独自開発したガーデニアエキスにトリセルラータイトジャンクションを増やす効果があることを見いだした。
トリセルラータイトジャンクションは表皮のバリア機能に顆粒層では細胞同士の隙間をなくして密着性を高め、角質層では構成成分の産生を促進するという影響を与える。表皮には、外部からの刺激や水分蒸散を防ぐため、角質層と顆粒層に二つのバリアが存在する。
顆粒層では、上から2層目に存在する隣接した2細胞を密着させる「タイトジャンクション」がバリア形成に重要な役割を果たしている(図1)。しかし、三つの細胞が1点で接する部位ではタイトジャンクションのみでは十分に密着できず、隙間が生じる。この部位で細胞同士を密着させて隙間をなくしているのがトリセルラータイトジャンクションだ。これまで、トリセルラータイトジャンクションが表皮のバリア機能に及ぼす影響については十分に明らかにされていなかった。
そこで同研究では、トリセルラータイトジャンクションと表皮バリア機能との関係を検証した。トリセルラータイトジャンクションの形成に必要な遺伝子(LSR)の発現量を人為的に減少させた表皮角化細胞を用いて三次元表皮モデル(LSR減少モデル)を作製した。経上皮電気抵抗(※1)を指標にバリア機能を評価した結果、LSR減少モデルでは経上皮電気抵抗値が低下し、バリア機能が弱まることを確認した(図2)。
これらの結果から、トリセルラータイトジャンクションは顆粒層の細胞の密着性を高め、バリア形成に重要な役割を担っていることが示された。
角質層では、バリアが細胞間脂質、天然保湿因子(NMF)、角質細胞によって複合的に形成され、外部からの刺激や水分蒸散を防いでいる(図3)。細胞間脂質は角質細胞の隙間を埋めることで肌から水分が逃げないようにする役割がある。細胞間脂質の主成分であるセラミドが多いほどバリア機能は高く保たれる。また、NMFは角質細胞内で水分を保持し、角質層のうるおい維持に重要な役割を果たしている。
トリセルラータイトジャンクションの形成に必要な遺伝子(LSR)の発現量を人為的に減少させた表皮角化細胞(LSR減少細胞)において、様々な遺伝子発現量の変化を解析した。その結果、LSR減少細胞では、セラミド合成酵素遺伝子(CERS4)およびNMF産生に関与する遺伝子(FLG)の発現量が減少することを確認した(図4)。さらに、その他の角質層形成に関わる複数の遺伝子の発現量も減少していた。
これらの結果から、トリセルラータイトジャンクションの減少は正常な角質層形成を妨げ、角質層のバリア機能の低下をもたらすと考えられた。すなわち、顆粒層に存在するトリセルラータイトジャンクションは、顆粒層のみならず角質層のバリア形成にも重要な役割を担っていることが明らかとなった。
さらに、女性被験者23人(20代~60代)の頬部を対象に、テープストリップ法で採取した角質細胞から、トリセルラータイトジャンクションの形成に必要な遺伝子(LSR)の発現量を測定した。あわせて、バリア機能の指標である経表皮水分蒸散量を測定し、LSR発現量との関連を解析した(図5)。
その結果、LSRの発現量が多いほど経表皮水分蒸散量が少ない、すなわちLSRの発現量が多いほどバリア機能が高いことが明らかになった。これらのことから、トリセルラータイトジャンクションが多い肌では、顆粒層および角質層のバリア形成が促進され、肌のうるおいを保つ力が高まることが示唆された。
これらの結果から、トリセルラータイトジャンクションが肌のバリア機能維持に極めて重要であることが示唆された。
続いて、トリセルラータイトジャンクションの形成を促す成分を探索した結果、独自の抽出・処理を施したガーデニアエキスにトリセルラータイトジャンクションの形成に必要な遺伝子(LSR)の発現量を増やす効果があることが分かった(図6)。同エキスは、トリセルラータイトジャンクションの形成を促進することで、肌のバリア機能を高め、うるおいを保つ効果が期待された。
ガーデニア(Gardenia jasminoides)は、古くは飛鳥時代頃から今日まで衣類や食品の染料(色付け)、お茶の香り付けとして重宝され、人々の生活を豊かに彩ってきた植物だ。また、健康目的に利用できる植物としても知られている。
同社では、従来の熱水抽出法よりも高温の水で抽出する「高温抽出法」によってガーデニアから新たな有用成分を抽出することに成功した。さらに、ガーデニアの色素には、酵素処理で色が変化するものがあることから、酵素処理によって成分変化を起こすことでガーデニアのもつ美肌効果をより高めることができるのではないかと考え、検討を行った。試行錯誤の結果、「高温抽出法」と「酵素処理」の掛け合わせにより、トリセルラータイトジャンクションを増やすことができるエキスの開発に成功した。
同研究成果は、今後うるおいを保つ化粧品開発に応用していく。なお、今回の研究結果は2026年3月26~29日に大阪で開催された日本薬学会第146年会にて発表した。
※1経上皮電気抵抗:細胞同士を密着させる力の指標。細胞同士が強く密着しているほど電気は通りにくくなり、抵抗が高くなる。数値が高いほど、バリア機能が高いことを表す。




























