日本メナード化粧品は、名古屋市工業研究所との共同研究により、プラズマを用いた特殊な分散技術を活用し、紫外線防御剤として広く用いられる微粒子酸化チタンを水系中で安定的に分散させる技術を確立した。今回さらに技術を進化させ、弱酸性から弱アルカリ性までの幅広いpH条件下においても分散安定性を維持し、紫外線遮蔽効果を大きく向上させた新規UVケア製剤の開発に成功した。

微粒子酸化チタンは、優れた紫外線防御効果と安全性から多くの化粧品に配合されているが、粉っぽさやきしみ感に加え、水中で凝集しやすい特性がある。特に水性製剤では、処方のpH変化により粒子表面の状態が変化しやすく、安定した分散を維持することが難しいという技術的な問題があった。そのため一般的に界面活性剤などの分散剤が用いられてきたが、べたつきなど使用感への影響が課題となっていた。

メナードはこれまで、液体表面にプラズマ(雷のような放電現象)を発生させることで、水性製剤中にさまざまな化粧品原料を分散させる「液面プラズマ分散技術」を開発し、新規複合粉体の創製に成功している。今回、この技術を微粒子酸化チタンの水系分散に応用し、分散剤を使用せずに、弱酸性から弱アルカリ性までの幅広いpH領域で安定した分散状態を維持できる「微粒子酸化チタン水分散体」の開発に成功した。さらに、粒子が高分散状態になることで紫外線を効率的に反射・散乱できるようになり、紫外線遮蔽効果は従来比約2.6倍(※1)に向上することを確認した。

同技術により、水性製剤において分散剤などを一切使用せずに微粒子酸化チタンの高い分散安定性と優れた紫外線防御効果を同時に実現することが可能になった。これにより、少ない配合量でも高い紫外線防御効果を発揮でき、ミストや化粧水のようなさらりと軽やかな使用感を持ったUVケア製品への応用が期待される。

なお、同研究の成果は3月10日~11日にかけて神奈川県横浜市で開催された表面技術協会第153回講演大会にて発表した。

メナードは、名古屋市工業研究所と共同で、新しい化粧品製剤技術の開発および複合粉体の創製を目的に、プラズマ技術の応用研究を進めている。これまでに、水中と気中にそれぞれ電極を配置し、気中電極から水面に向かって高エネルギーの放電を発生させる「液面プラズマ」を活用することで、本来は水中で安定分散が困難な原料を分散させる「液面プラズマ分散技術」の開発を行ってきた(図1)。

図1:液面プラズマ分散技術 概略図

図2:微粒子酸化チタンの分散状態

微粒子酸化チタンのような無機粉体は、水中に分散させると直ちに凝集体を形成し、底に沈殿してしまう(図2従来品)。一方、微粒子酸化チタンの水分散液に液面プラズマを照射すると、放電の衝撃により凝集体が解砕されるとともに、粒子表面の電気的な性質が変化する。その結果、粒子間の電気的反発力が高まり、再凝集が抑制され、高分散状態を維持することが可能になった(図2プラズマ処理品)。

液面プラズマ技術によって今回開発した微粒子酸化チタン水分散体は、弱酸性から弱アルカリ性までの幅広いpH領域で安定した分散状態を維持することを確認した(図3)。これにより、従来は配合が難しかった水性製剤を含め、さまざまな製剤への応用が可能となった。

図3:液面プラズマ処理微粒子酸化チタン水分散体の外観

液面プラズマ技術によって開発した微粒子酸化チタン水分散体(以下、プラズマ処理品)と、従来法で分散させた微粒子酸化チタン水分散体(以下、従来品)について、紫外可視分光光度計を用いて紫外線遮蔽効果を比較した。

その結果、紫外線領域(280~400ナノメートル)ではプラズマ処理品は従来品と比較して吸光度が高く、約2.6倍の遮蔽効果を有することを確認した。一方、可視光領域(400~600ナノメートル)では、プラズマ処理品は従来品よりも吸光度が低く、微粒子酸化チタンが高分散化されたことで、透明度が高くなったと考えられる(図4、図5)。

図4:従来品とプラズマ処理品の吸光度比較

図5:従来品とプラズマ処理品の外観

液面プラズマ分散技術によって、紫外線を効率的に遮蔽しながらも、透明度が高く、粉っぽさや白浮きを抑えた製剤設計が可能となる。

 

※1 紫外線領域(280~400ナノメートル)における吸光度の積分値(グラフの面積に相当)より算出